夢幻なる縁

□1章 二代目四神の神子
21ページ/37ページ

 千代の提案で復興祭に着ていく梓の服を買いに行くことになった。

 どうも梓は黒龍からもらった服とドレスしか持っていなかったらしい。
 異世界の時から梓はファッションとかあまり興味がなかったから、すぐに納得して笑ってしまった。
 そう言う私も梓と同じでファッションにはあまり興味なく、清潔感があって着心地が良ければなんでもいい人。

「本当にそう言う所梓らしいよね?」
「そう言う帆波先輩だって、無関心だったじゃないですか?」
「そうなの? でも今の帆波はおしゃれだよ思うわよ。袴姿も流行着も着こなせてるし、お化粧だって服装に合った仕方をしてるもの?」
「そうなんだよ。帆波先輩、なんかすごく女らしくなってさ」

 本来の私を知る梓は不満そうに正論を言い返すけれど、今しか知らない千代は半信半疑で私を褒めてくれる。
 梓も少なからずそう思っているようだ。
 
 嬉しいけれども複雑な気持ちになり、早いとこからくりを打ち明ける。

「そうじゃないんだ。 実は服はおじいちゃんが何かあるたび買ってくれてるから、こっちには山ほどあるんだ」

 私とおばあちゃんの服はほとんどおじいちゃんチョイスで、たまに行きつけのブティックで選ぶぐらい。
 おじいちゃんはセンスが良いため、ハズレがないから任しているダメな奴。

「帯刀さんって帆波先輩に激甘ですよね? おねだりしたらなんでも買ってくれそう」
「あ、確かに。言わなくても欲しいのが分かるらしく、買ってくれるかな? でも最近は特別な日だけで良いからって言ってる」
「帆波は、偉いわね? 私だったら遠慮なく買って貰うのに。だっておじいさんでしょ?」
「私も」

 おじいちゃんの事をよくは知らないから二人はそう言えるんであり、実際目の辺りにしたら同情してくれるんだと思う。
 でもおじいちゃんに変な印象を持ってもらいたくないから黙っている。

 おじいちゃんの買い物は半端ではない。
 私に似合いそうな服に限らずアクセがあったら、迷わずすべてを買う。
 衣装部屋が気づいたら二つに増えていた。

「二人ともそんなんじゃ立派な大人になれないよ」
「千代、おすすめの店はある?」
「そうね? 雑誌だと……」

 ついついお小言を言ってしまうと二人してスルー。
 これから行く店を話をする。

 大丈夫なのかこの二人。

 そんな私達を見ている九段さんはクスクスと笑い出す。

「帆波は、どんな大人になりたいのか?」
「私はバリバリ働く職業婦人。世界に通用する科学者になりたいんです」
「帆波の作るからくりはどれも興味深い物ばかりだから、今後も努力を惜しまなければなれるのではなかろうか?」
「そう言われると、ますますやる気が出てきます」

 笑われていた割には私を馬鹿にしてるわけではなく、将来の自分を語ると否定しないで応援してくれる。
 そんな人こっちでは珍しいから嬉しくて張り切ってしまう。
 科学はからくりとはちょっと違うんだけれど、元はそうなのかも知れない。

「所で帆波は、甘味が作れるからくりは出来るだろうか?」
「もちろんです」
「是非頼む。これで好きなときに好きな」
「ダメよ九段。四六時中お菓子を食べてどうするの?帆波、作るのなら、九段の体調を管理するからくりにしてくれる?」
「うぬぬ……」

 話が盛り上がり創作意欲が湧く中、千代にも聞かれていて却下と変更をされる。しかし凹む可愛そうな九段さんには悪いけれど、これはこれで創作意欲が湧く。

 摂取カロリーに運動量と消費カロリーをデータに記録。

 異世界では朝飯前でもここでは難しいので、こう言う時は陰陽術の力を借りている。と言っても私の陰陽術なんてたかが知れている……。

「あそうだ。九段さんに私に陰陽術を教えてくれませんか?」
「帆波は陰陽術に興味があるのか?」
「はい。独学で勉強をしているのですが、どうしても限界があるんです。科学と陰陽術を融合させると便利なんですよ」

 素晴らしい適任者を見つけさっそく弟子入り志願。
 凹んでいた九段さんは不思議そうに顔を除き込むので真剣だと言うことを伝えると、一瞬でパッと顔に花が咲き手を握られる。

 やっぱり大型犬の仔犬。
 そう思うと不意打ちに手を握られても、少しドキドキするだけで意外と平気だ。

「帆波の志は素晴らしい。我で良ければいくらでも教えよう」
「ありがとうございます」
「帆波先輩、良かったですね? と言うより発想がすごいです」
「うん」

 梓も自分のことのように喜んでくれて、ますますやる気が出てくる私であった。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ