夢幻なる縁
□1章 二代目四神の神子
20ページ/37ページ
私が遙か5の世界に召喚されてから、早いもので六十年の月日が流れた。
今も変わらず私は帯刀さんとそして四神達と仲良く……異世界の高校に通ってたまに帰ってくる末孫の帆波と暮らしている。
どうも帆波の神力は桁外れらしく幼い頃は四神達が制御するため数年間、五年前ぐらいからは兄の小言から逃げるため再び暮らすようになった。
だからなのか帯刀さんは帆波命。
私も帆波の事は孫の中では可愛いとは思うし、一番波長が合い友達のように仲が良い。
帯刀さん似で俊才で美人だけれど、私並みのドジで嘘が下手だからだろうか?
ただ長く生き過ぎたようで今や私の秘密を共有する旧友は咲ちゃんとアーネストだけとなってしまった。
そして子供と孫の死にも直面してしまい、あの時は本当にショックで帯刀さんがいなければ私は自殺していたかもしれない。
長生きすると悲しくて辛いことも沢山あったけれど、私は帯刀さんと出会えて移住できて幸せである。
「帯刀さん、驚かせないで下さい。死んでしまうかと思って生きた心地がしませんでした」
「だって仕方がないでしょ? 私の可愛い帆波が婚約したって言うんだから。しかもあの藤堂コンシェルンの御曹司と言えば、若い女性達を従えてるんだよ?」
目覚めた帯刀さんに小言を言えば、想像通りのオチを真剣に語りだす。
相変わらずの親バカと言うか孫バカに少々呆れ苦笑してしまう。
おかげでこの時代にも関わらず娘の美岬は二十五歳、叶羽は二十四歳で結婚。
それでも相当揉めて私が雷を落とし、渋々と納得させたと言う感じだった。
だけど帆波はあれだけお見合いするのを嫌がってたのに、どう言う風のふきまわしだろうか?
まさか一目惚れ?
「確かにそれはちょっと心配ですよね?」
「ちょっとじゃない。まったく」
「しばらく二人を暖かく見守りましょ? それとも帯刀さんは帆波を一生面倒見られるんですか?」
少しだけ帯刀さんの肩を持つも怒られるだけで、結局娘達にも言った文句を優しく問う。
しかも娘達の時より私達は更に歳を取り考えたくないけれど、いつ死んでしまってもおかしくはない。
「見られないね?」
「分かれば良いんです。大体帯刀さんは私だけじゃダメなんですか?」
冷静さを取り戻しシュンと答える帯刀さんが愛しくなり、誰もいないことを確認し帯刀さんをハグした。
おばあちゃんおじいちゃんになっても私達はラブラブで昔とちっともその辺は変わってない。
「孫に嫉妬する祖母がどこにいるの? 帆波は何があっても私の孫なのだから、それ以上の感情は抱かない。抱けるのは妻である夕凪だけ」
「それならなおさらです。帆波にも私達のような恋愛をしてもらわないと困りますよ。それにバッグには四神達が付いているんですから、何があっても大丈夫です」
私も嫉妬して聞いた訳じゃないのに誤解されてしまい、クスクス笑いながら私をギュッと抱き締めてくれる。
孫に恋愛感情なんて抱いたら、いくら帯刀さんでも軽蔑するだろう。
安心した私は得意げに心配していない理由を話す。
神様に見抜けない悪人など、この世にいないと思う。
だから私は彼らと約束をして任した。
「その四神達が帆波にちょっかいださなけゃいいんだけどね?」
「おばあちゃん。入っても良い?」
廊下から帆波の声がしたので、私は急いで帯刀さんから離れる。
いくらなんでも孫の前でいちゃつくのは、いろんな意味でどうかと思うんだよね?
例え見た目六十代でも現実は九十近くの老夫婦だから、手を繋ぐ程度はまだしも男と女の関係になっているとは悟られたくない。
「いいよ」
準備が整い返事をするとドアが明き帆波が入ってきて、帯刀さんが気づいているとわかると安堵したのか笑みがこぼれる。
「良かった。おじいちゃん、驚かせてごめんなさい」
「私の方こそ迷惑をかけてすまない。それだけ私にしてみればショックな出来事だった」
「実は婚約って言うのは周囲を欺くための偽り。 私も尚哉さんも結婚する気なんてまったくないんだ」
帆波を前にすると再びしょんぼりする帯刀さんだけれど、帆波の驚くべき真相暴露により完全復活するのだった。