夢幻なる縁

□1章 二代目四神の神子
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 私が縁談を受けると承諾をしたら家族は喜び、おじいちゃんは不満そうだった。
 最後には私が決めたことだからと言って納得はしてくれたけれど、その夜は元気がなく慰めるのが大変だったとおばあちゃんが言っていた。けれどその割りには嬉しそうだったから、これはこれで良かったことにしておく。



 そして今日は縁談当日。
 帝都で一二を争う高級料亭を貸し切り、警備の人は半端がない。さすが財閥家同士の縁談はスケールが違う。
 開始時刻が近づきにつれ緊張してきて、控え室を意味もなく歩き回る。

「帆波、少しは落ち着きなさい」
「だって……。なんで私縁談なんかするんだろう?」
「は、今さらそう言うか? 逃げるなよ」

 当たり前のように眞佐之お兄ちゃんに注意され半泣きで弱気に言うと、驚かれきつく釘を刺されてしまう。
 
 ここまで来て逃げるなんて本気で思ってるんだろうか?
 私そこまで無責任じゃない。

「逃げるわけないでしょ?」
「それならいい」
「帆波、ごめんな。父さんが口が軽いのがいけなかった。よく考えればまだ娘を嫁に行かせたくない」
「父上は気が早いですよ」
「兄上、この縁談は結婚前提です」
「……眞佐之、それを今言う?」

 お父さんも今さらこうなってしまったことを悔やみまくり 、眞佐之お兄ちゃんは今まで見苦しいぐらい隠していたやっぱりの真相をポロリ。
 崇刀お兄ちゃんだけ冷静で頭を痛める。
 私も気づいていたけれど、言われるとショックは大きい。

 それでも私は藤堂さんのことをもっと知りたいと思ったから、私の意志で今ここにいる。
 嫌だったら今までのように、どんなことをしても断固拒否をしていた。

 まさか藤堂さんに一目惚れ?

「ねぇ一目惚れってあると思う?」
「ああ。父さんは母さんに一目惚れだったからね? まぁ最初の頃は年下だからまったく相手にされなかったけれど、父さんは諦めずに口説きまくったよ」
「そうだったんですね」

 一目惚れをあんまり信じたくなく聞いてみると、お父さんは少し照れながらお母さんとの出会いを教えてくれた。
 今までお母さんからしか聞いたことがないだけに、この情報は聞けてラッキーだ。

 十八歳だったお父さんと二十三歳だったお母さんが出逢い大恋愛の末結婚。
 最初はお父さんの言う通りお母さんは相手にしなかったらしいけれど、あまりのしつこいアプローチと男らしさに落ちてしまったらしい。

 お兄ちゃん達は二人とも縁談結婚だったから、縁談してから結婚するまで一年も掛からなかったような?
 だったら私も?
 となれば高校は卒業できたとしても、さすがに大学は行けない?

「ねぇ条件に結婚は七年半後って付けれる?」
「理由はどうするんだ?」
「……世界をこの目で見て回る」
「馬鹿だろう? お前」
「だよね? ……あれなぜ私結婚前提の話をしてるんだろう?」

 自分でも苦しい言い訳に馬鹿と呼ばれても無理はないけれど、そもそもの理由に違和感を持つ。

 結婚にそんな抵抗がないのはなぜ?


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