夢幻なる縁
□1章 二代目四神の神子
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「帆波先輩、そっちに行きました」
「任せて。金属性だから炎と」
梓に言われて襲いかかってくる怨霊目掛けシュウちゃんの力を封じ込めた手榴弾を安全ピンを抜き投げる。そしてタイミングを見計らい
「点火」
と言い放せば手榴弾は爆発。
怨霊は力尽き動きが止まり、千代により無事封印。
「帆波先輩、四神の神子の力は凄いですね。多属性?」
「当たり前でしょう? なんせ四神の力を借りてるんだから」
「それじゃ帆波と四神はもう心が繋がってるのね? 昨日襲名したのが嘘みたい」
よほどスムーズに怨霊退治が出来たのかベタ誉めされ、真実を言えない手前どう反応して良いのか困ってしまう。
四神は私が産まれた時から身近にいて遊び相手だったから、心が繋がっていると言うか仲良しなのは必然的。
でもそれは梓達にはまだ秘密にしている。
別に疑っている訳ではないけれど梓と秋兄以外はまだよく知らないから、知ってから話した方が相手からしても良いんだと思う。
「あ、もうお昼じゃない。昼食にしよう」
たまたま時計を見ると十二時を過ぎていたため、わざとらしく昼食の話を切り出す。本当にお腹は空いてはいる。
「本当ですね? じゃぁ一時間後にここへ集合と言うことで」
「分かった」
てっきり全員一緒の昼食かと思ったのに、秋兄とダリウスさんはさっさとどこかへ行ってしまう。
もしかしてあんまり仲が良くない?
「千代、我はこの近くにあるオムライスが食べたい。梓と帆波もどうだろうか?」
「是非お供します」
雑誌を取り出し迷わずあるページを開き目を輝かせながら、まずは千代に食べたい物を言い私達も誘われる。 特に行く当てもなくオムライスは好物なので、二つ返事でうなずく。
「私も良いですよ」
「では、参ろう。地図によればこのすぐ先にあるらしい。デザートのケーキもお薦めだそうだ」
「それは楽しみです。確か帆波先輩はショートケーキが好きでしたよね?」
「うん。でもケーキならなんでも好きだよ」
梓も賛成なので九段さんの案内の元その店に行くことになり、ケーキの話で盛り上がる。
異世界での病院近くの喫茶店のケーキが美味しくて、梓とよく寄り道したり千代さんのお土産に持って行った。
「帆波ったら九段と同じで甘い物には目がないのね? 九段、仲間が出来て良かったわね?」
「フム。帆波、我にいろんな店へと案内して欲しい」
「はい、喜んで。私も甘味友が出来て嬉しいです」
「……これはひょっとしたら」
「かも知れないね」
深くは考えずに九段さんと甘味巡りをすることを約束していると、千代と梓は不気味な笑顔を見せながら何か良からぬ企みが動こうとしていた。
なんの企みかは分からないけれど、なんとなく嫌な予感がするから気を付けなければ。