FRAGMENT

□プロローグ
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人はなんのために生きているのだろうか?
生きていて何が楽しいんだろうか?
どうして人は笑ったり怒ったり泣くことが出来るんだろうか?
私は感情と言う物が分からない。
そんなものとっくになくしてしまった。
生きている理由もなければ、死ぬ理由もない。
だから私はこうして、意味もなくただ生きているだけ。
生きていればお腹が減るし、風雨をしのぐ家や衣類も必要になる。
そのためにはお金が必要で、稼ぐには仕事をしなければならない。
私の仕事は、掃除屋。
仕事の依頼であれば、私は簡単に罪のない人を殺せる。
知り合いだって殺してしまう。
罪悪感も何もない。
理由なんて知る必要がないし、私には関係がない。
私は私の仕事をこなしているだけ。
私にとって人の命なんて、その程度の価値しかない。
自分の命だってそうだ。
いつ失っても構わない。
そう思っている。


そんなマシンのような私に人間らしい心をくれたのは、掛け替えのない小さな命と産まれて初めて出来た大切な人だった。
私はその一匹と一人に、
失っていた感情
生きる喜び
命の尊さ
人を愛すること
を教えて貰った。


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