夢幻なる絆

□リアルワールドへようこそ
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凪、帯刀さんとシロちゃんを招き入れる。



帯刀さんとシロちゃんが私の夏期休暇に合わせ未来へ一週間訪れることになり、私は前の一週間必死に部屋の片付けや買い出しに追われていた。
掃除嫌いで豚小屋寸前だった我が城もなんとか小綺麗になり、私もやれば出来ると言う変な自信がついたり。



「いらっしゃい、帯刀さん。シロちゃん」
「夕凪、元気にしてた?ご褒美あげるから、こっちに着なさい」
「はい」


ようやく帯刀さんとシロちゃんが召喚され元気でお出迎えすると、帯刀さんは笑顔でそう言ってくれたから私は疑いもなく懐に飛び込む。
久しぶりの最愛の人の温もり。
最高の幸せ。



「それでこれから夕凪は、どうやって私を楽しませてくれるの?」
「今日はウインドウショッピングをします」
「それは楽しみだね」

以前帯刀さんにも話したことがある現代のデートの一つを言うと、一先ず帯刀さんは満足そうな笑みを浮かべキスをしてくれる。


「凪、小松帯刀。我を忘れる出ない」


そんな二人だけの甘い時間が流れている中、不満大爆発と言ったシロちゃんが声を上げ自分の存在をアピールする。

ごめんなさい。
忘れてました。


「シロ・・・。あなたはおまけなのだから、おまけらしくしてなさい」
「我はおまけではない」
「うわぁ喧嘩しないで下さい!帯刀さん、私とシロちゃんは向こうに行ってますんで、これに着替えて下さい」


いがみ合いたちまち喧嘩をしだす二人を仲裁し、私はこの日のために買った現代服一色を渡しリビングに行こうとした。

ストライプのポロシャツにジーンズ。
きっとこれを着た帯刀さんも格好いいんだろうな?


「着方が分からないから、夕凪着せて」
「あそうでしたね。なら手伝いますから、全部脱いじゃって下さい」


言われて初めて肝心なことに気づき、何気なくそう指示しながら着やすく洋服を整える。
私も幕末に行ったばかりの頃は、梅さんに着替えどころか私生活もいろいろ手伝ってもらった。

だから今の帯刀さんも、私と同じなんだよね?
なんか大きな子供みたい。

でも


「本当に全部脱いでいいんだね?」
「あはい。全部脱がないと、着れませんし」
「・・・分かった」


当たり前のことのはずなのに、帯刀さんは何か言いたそうにも渋々頷く。


「脱いだらまずこれから着て下さいね。着方は袴と同じ要領なの・・で?」


それでも私は構わず話を進め下着を手に取り、帯刀さんに手渡すため視線を上げる。
目が点になり慌てて目線を背けるけれど、一気に体温が上昇して心臓も高鳴っていく。

帯刀さんの不思議な態度を、ようやく理解した。
全部脱ぐってことは、つまりそう言うこと。


「これをはけばいいんだね。ありがとう。・・・何そんなに私が欲しい?」
「な何馬鹿なことを、朝っぱらから言ってるんですか?」


待ってましたと言わんばかりの悪魔の笑みで、明らかに私を誘う口調で囁き耳たぶを軽く噛まれる。
声を裏返させ懸命に拒否っては見るものの、もっと強引に攻められたら負けてしまうかも知れない。


「朝っぱら?だったら夜ならいいの?」
「・・・はい」
「ならお楽しみは、取っておくことにするよ」


と意外にもこれ以上は攻めてはこず、そう言うことになり話は終了。
再び帯刀さんに視線を向ければ、いつの間にか着替えも完璧に終了していた。

ひょっとして帯刀さん、一人でも着替えられていた?
私は必要なかった?


「帯刀さん、嘘を付きましたね」
「付いてないよ。夕凪の助言と助けがなければ着替えられなかった」
「そうですか?それならいいです。あ、その姿でこの髪型はおかしいので、私がおかしくないように結い直しますね」
「そう?なら頼むよ」

真相を解いても涼しげに返されてしまい私も一応それで納得し、帯刀さんの背後に回りそう言って髪の結わきをほどきクシでとく。
帯刀さんの髪はサラサラしていて、私の髪よりよほど綺麗だ。

「ねぇ帯刀さん、たった一週間だけれど、ここを我が家だと思って下さい。遠慮は無用です」
「そうさせてもらうよ」
「楽しい思い出を沢山作りましょうね」

って言いながら私は手を止め、帯刀さんを背後から抱きしめる。

本当にこれからどんな思い出が作れるんだろうね?



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