夢幻なる絆

□リアルワールドへようこそ
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凪、勝負に負ける。




「兄ちゃん、すごいね。大物を二匹もすくうなんて」
「妻と賭けをしてますから、少々本気を出して見ました。負けたくなかったですからね」
「そうなのかい?しかし姉ちゃんはすくう前からホイを派手に破るとはなかなか出来ない技だよ」
「アハハハ」


金魚すくいで新たな伝説を作ってしまい豪快に笑うおじさんに、私は苦笑するしかなかった。
賭けに勝った帯刀さんは、余裕の笑みを見せている。

やっぱり金魚すくいなんて、私にはむいていませんでした。
まさか力み過ぎて水圧に負けるなんて信じられない。
逆に帯刀さんは華麗に大物を二匹をすくい、まだ余裕がある感じだった。
あの自信はここから来ていたんだね。


「はい、この二匹はおまけだよ」
「ありがとう。夕凪、行くよ」
「はい」


おじさんから大物二匹と小さい金魚二匹を貰い受け、愕然としている私の腕を持ち立ち上がる。

これで夏祭りの縁日は終了か。
まだ射的とかヨーヨーつりとかやりたかったのに・・・。




「本当に夕凪は期待以上のことをして、私のことを楽しませてくれる」
「それって褒められてるんですか?」
「ああ、褒めてるよ」


予想通り縁日巡りは速攻終了させ家への帰り道、なかなか立ち直れない私にそう帯刀さんは機嫌良く言って頭をなぜる。
しかし私の気持ちは晴れないどころか、余計落ち込むだげだった。
褒められているって言うか、馬鹿にされている。


「それで私達はこれからどうするんですか?」
「大人のデートと言う物を楽しむ」
「大人の?・・・そんなの毎晩して」
「そう言うのはデートとは言わないでしょ?」
「確かに・・・」
「まったく夕凪はドスケベェだね」


話を変え本題を問い答えに不満で何気なく愚痴り中、冷静な突っ込みと耳元でゆっくりとためながら甘く囁かれる。
耳から真っ赤に染まり、真実過ぎて反論できない。

私は完全に獣です。
でも帯刀さんから大人のデートと言われたら、それしか思い付きません。





「うわぁ〜、キレイ」


訳も解らず帯刀さんに連れて来られたのは、東京の夜景が一望出来そうなホテルの一室だった。

予想してないと言うよりありえない展開にも関わらず、私はガラス張りにへばり付き夜景を堪能する。
宝石箱の中にいるみたいで、いつまで見ていても飽きない。


「気に入ってくれた?」
「もちろんです。一体どうしたんですか?」
「宝くじと言う物を試しに買ってみたら、十万当たってね。さらにネットで格安で泊まれるここを見つけた訳」
「さすが帯刀さん・・・」


凄すぎるさすがと言うべき理由だった。

帯刀さんはくじ運もいいんだ。


「私達の世界ではなかなかこう言うことは出来ないからね。二人だけの静かな時間を楽しもう」
「そうですね。でもシロちゃんにお留守番大丈夫かな?」
「大丈夫だからシロのことなど忘れなさい。今はただ私だけを考えて感じてればいい」
「帯刀さん・・・」


一旦家に帰り置いてきたシロちゃんをちょっと心配していると、例の如く帯刀さんはムッとそう言いながら私を抱き寄せ見つめる。
帯刀さんの清んだ瞳に吸い込まれそうで愛しさが込み上げてきて、私は名を呟きキスを求めればすぐに重なり合う。

そうだよね。
今は帯刀さんのことだけ考えればいいんだよね。


「そうそれでいい。それにしてもここの夜景は、お世辞抜きで幻想的で綺麗だよ」
「私と夜景どっちが綺麗ですか?」
「もちろん夜景」
「やっぱり・・・。でもこう言う時はお世辞ぐらい言ってくれたって」


その場のノリで聞いてみたけれど返ってきたのは、いつも通りの手厳しい答えだった。
しかも即答でせっかくのムードが台なしだ。


「私はお世辞や嘘が嫌いでね。夕凪はどうやっても綺麗ではないでしょ?」
「なら可愛いですか??」
「そうだね。愛嬌があるから、強いて言えば可愛いよ」


なんて上手い具合にまとめられて会話は完結し、用意されていたシャンパンを開けグラスに注ぐ。
なんか納得が行かない答えだけれど、これ以上は聞き出せないと思うのでやめておく。


「あ私はシャンパン呑めないんで」
「知ってる。だから夕凪にはカクテルを作ってあげる」
「それはありがとうございます」


炭酸がまったく呑めない私は入れられる前にそう言えば、百も承知と言うような口ぶりで今度はカシスと苺ミルクを持ってきて作り始めた。
カクテル作りがよほど気に入ったらしく、毎晩いろいろ試して作ってくれている。

遊び半分で買ってそのまま放置してあったカクテル作りキットが、まさかこんな所で役に立つとは思わなかった。
今度本格的な物を買って、プレゼントしよう。
いつももらっているばかりだから、たまには私からプレゼントするのも良いよね。


「さぁどうぞ私のお姫様」
「わぁ可愛い」


可愛らしいピンク色のカクテルが出来上がり、私は子供のようにはしゃぎ帯刀さんの隣に座る。
今は前より隣に座って、一緒に夜景を楽しみながら呑みたい。

「乾杯」


カーチン



軽くグラスを重なり合わせ、私達は同時に呑み大人の優雅な時間を楽しんだ。



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