夢幻なる絆
□リアルワールドへようこそ
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凪、夏祭りに行く
「帯刀さん、シロちゃん。お待たせしました」
「美しい」
「なかなか似合うよ。でもその浴衣は安物だね」
「・・・まぁ」
夏祭りに行くため新しいの浴衣に着替え二人に見せると、絶賛のシロちゃんと違い帯刀さんからはお褒めの言葉と痛い言葉を授かる。
目の肥えた帯刀さんには、所詮四点セット９８００円の浴衣なんて見ただけで安物だと分かる。
さすがにケチり過ぎたか？
京では私の普段着用でさえ、京染めや高そうな物ばかり。
しかも私が行く度、新しいのが増えている。
今では一体何着持ってるのだろう？
「今度夕凪が帰ってくるまでに、薩摩から反物を取り寄せておく。好きなものを選んで好きなだけ作らせない」
しかも更に枚数は増えそうな予感。
すべて着るのが大変そう。
「なら帯刀さんとお揃いの浴衣が欲しいです」
「お揃いね。夕凪が良ければそれでも構わないよ」
本当はもういらないと断りたかったけれど言ってる帯刀さんが楽しそうだったから、そう言う提案をして穏便にことをすませる。
帯刀さんとお揃いの浴衣。
それを着て京の街を歩いたり、縁側で仲良く夕涼みなんて出来たりしたらいいな。
「楽しみにしてますね。それじゃぁ早速行きましょうか？」
「ああ、そうしよう」
考えただけでその日が待ち遠しくなる。
「おじさん、チョコバナナ二本」
「一本でいい」
「？なら一本下さい」
「あいよ」
まずは腹ごしらいと言うことで、焼きそば焼とうもろこし焼いか。
そして最後にチョコバナナを買おうとおじさんに注文すると、帯刀さんのいかにも機嫌が悪い声に言われ私は分からないながらも言い直し購入。
帯刀さんはバナナが嫌い？
それともチョコ？
だけどチョコは美味しそうに食べていた。
「あ金魚すくいだ。帯刀さん一緒にやりましょう？」
「やらない」
「え〜、縁日って言えば金魚すくいが王道なんですよ。帯刀さんはやったことないんですか？」
話題を変え金魚すくいを見つけて帯刀さんにせがむと、なぜか即効却下で金魚すくいから遠ざかる。
やっぱり機嫌が悪い？
「なら私が大物をすくえたら、一つだけなんでも言うこと聞いてくれる？それならやってもいい」
「だったら私が大物を」
「すくえる自信があるの？」
「うっ・・・金魚一匹でさえありません」
と帯刀さんは条件を出してくるので私も調子にのって便乗しようとしたら、いつものように鋭い視線で厳しい現実を突き付けられ愚かさを思い知らされてしまった。
ゲームなら金魚すくいは結構得意でも、現実はすぐにポイを破いて即効終了だったりする。
「大体夕凪がすくったら、私に何をやらせたいの？」
「え、一日だけ私の執事をやって欲しいです」
「執事？私にそんな物をやらせたいの？」
「はい。帯刀さんの執事は格好いいんだろな」
「いいよ、やっても」
「本当ですか？」
「ああ。だけど私が執事で夕凪がお嬢様だったら、恋愛感情は一切なし。抱きしめても口づけも手を繋ぐこともしてあげない。それでもいいの？」
手を挙げで喜んだのも束の間で、すぐに私は帯刀さんのごもっとな問いに考え直すことになる。
帯刀さんには執事をやって欲しいけれど、そっけなくされる一日は結構きつい。
それによくよく考えたら、そんなにやってもらう必要はないのかも。
「・・・なかったことにして下さい」
「でしょ？私もそれは絶対にイヤだからね」
「そう言えば帯刀さんは私に何させたいんですか？」
「今夜は私以外何も興味を示さないで欲しい」
無事になかったことになり今度は私が帯刀さんに同じことを問えば、返ってきたのは分かりにくいことで私を悩ます。
一件そのぐらい簡単なことだとは思うけれど、帯刀さんのことだから簡単ではない。
「どう言うことですか？」
「夕凪は好奇心旺盛だから時より私を置き去りにして、興味があることに突っ込んでしまう。だから今夜はそう言うのは一切禁止」
「うわぁ〜、それ意外と難しい注文ですね」
問うとやっぱりそれは難題で、もう苦笑するしかなかった。
私の好奇心旺盛は生れつきで、興味を持つとそれしか考えられなくなる。
「難しい注文ね。それで金魚すくいはやるの？」
「やります。私もやっぱり大物をすくいます。やってみなきゃ分からないもん」
「そう？なら勝負しよう。夕凪は金魚を三匹すくったら、別のお願いを聞いてあげる」
絶対に出来ないと言う自信があるにも関わらず強気で前向きな姿勢を見せると、帯刀さんはいかにも見下し随分と馬鹿にされた条件に変えられ笑みまで浮かばせる。
悔しいかったけれど、私にはこれが調度いいかも知れない。
「いいましたね。なら私の願いは、これから一緒に縁日を楽しむことです」
「はいはい、分かりました」
新たな願いを言ったら相手にされず、軽くあしらうだけ。
私が条件クリアーできっこないと思ってるのだろう。
そして金魚すくい勝負は始まる。
果たして勝つのはどっち？