夢幻なる絆
□1.出会い
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そして私は帯刀さんの屋敷にお世話になること数日が過ぎた。
帯刀さんは家老だけあって毎日忙しそうにしていて、あんまり会話が出来ずにいる。
まぁ会話と言っても相変わらずからかわれているだけだから、わざわざ時間を作って来なくてもいいんだけど。
でも何かが少しおかしいんだよね?
この頃の帯刀さんってもう結婚してるはずなのに、この帯刀さんは花の独身男。
結構女性の扱いが得意らしく、色恋沙汰を絶えなく耳にしている。
良い噂も悪い噂も。
別に私には関係ないし、興味もないことだ。
おまけに以前から思っているけれど、髪の色が微妙に緑だし・・・。
「凪くん、おめでとう。君を未来人だって信じるよ」
「それってつまり、殿内義雄が四条大橋で暗殺されたんですか?」
「この数日殿内義雄を見張らしていたら、昨夜実行されたらしいよ」
早朝ここに来てからの日課になっている鯉達に餌を与えていると、機嫌がいい帯刀さんがやって来て不謹慎なことを楽しげに報告される。
私が知っているより数日遅かったのは、所謂掲載ミスって言う物だろうか?
ようやく信用されたのは嬉しいけれど、なんかその言い方良くない。
人が一人死んだしかも暗殺だよ?
・・・さすが家老。
「そうですか。でも今となっては信じてくれなくても、別にいいんですけれどね」
「そうなの?」
「はい。だってこうして何不自由なく過ごせてますからね」
「言われてみれば、それもそうだね。だけど凪くんが未来人って分かった以上、いろいろ話を聞かせてもらうよ。少しぐらいは私の役に立ったらどうなんだい?」
鯉の餌を与え続けながら正直な思いを何も考えずに言うと、いきなりどす黒い空気が流れ出し脅迫めいたことを私の耳元で世にも恐ろしい低い声で強制してくる。
つま先からゾッと寒気が走り怖すぎて断りたくても、無銭居候である私には選択権がない。
「そそうですね。なんでも話します」
「そう?ありがとう」
「うぅぅぅ………」
完全にそう言わせた癖してそれでも満足したらしく、悪魔の笑みを浮かせばせながら心にもない感謝をされる。
何も言い返せない私は泣き寝入りするしかないから、肩をガクンと落とし言いたいことを飲み込む。
しかし私は帯刀さんのことが嫌いじゃない。
酷いことばかり言っては来るけれど、私のことを少なからず考えてくれてるって事が分かる。
だから私は何を帯刀さんに言われても、こうして今の所我慢が出来るのかも知れない。