夢幻なる絆
□1.出会い
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密かな期待はばっさりと切り捨てられなかなか信じてはもらえず、話し合いは難航してしまいそのまま話は途切れる。
私にして見れば珍しく大人のまともな受け答えをしているつもりなのに、帯刀さんはどこか私を試しているって言うかおちょくっているようにしか見えない。
エリートらしいもっともな意見を言われたと思えば、いかにもバカバカしいことを本当らしく言ってくる。
それとも怨霊ってこのころは、本当に信じられていたとか?
そう言えばこの時代には、まだ陰陽師っていたんだっけぇ?
「だったらこれからのことを予言してごらん?もし当てたら信じてあげるよ」
「予言………。なら今日は何月何日ですか?」
「4月23日だけど」
沈黙が続くことしばらくしてやっぱり信じてないが帯刀さんは、そんな難題に近い提案を私に叩き付けた。
絶対当たりっこないと顔に書いてある。
いくら未来人であっても、過去をすべて知りつくしている人は少ない。
そのぐらい帯刀さんだって、当然知っているはず。
しかし
「クッ……、帯刀さんその勝負私の勝ちですよ。歴女であるこの私を見くびらないで下さい」
「歴女?」
「日本史をこよなく愛する女性のことです。数日のうちに浪士組の殿内義雄が会津藩邸に訪問した夜四条大橋で暗殺されます。ちなみにこの浪士組あ今は壬生浪士組だっけぇ?八月に新選組になりますよ」
「そうなんだ。なら結果が出るのが楽しみだね」
勝ちを悟った私は意味もなく立ち上がって胸を張り、これからのことを意味もなく熱く語る。
私に歴史を語らせたら幕末だけでも、一晩かかったって終わらない。
これで帯刀さんを圧倒することが出来ると思いきや意外にも顔色一つ変えず、あっさり理解してくれどことなく嫌みな笑みを浮かべた。
それは私の言葉が嘘であると思ってのことなのだろうか?
それとも?
「じゃぁ話はこのぐらいにして、そろそろ食事にしよう」
「え?」
「それとも先にお風呂に入りたい?それなら用意させるけど」
「私のこと疑ってないんですか?」
「うん、疑ってるよ。だけど君は面白いから、ここに置いてあげる。何か必要な物があったら、遠慮なく言ってよ」
「はぁぁ、それはどうも………」
意味滅裂なことを当然とばかりに言って話を進める帯刀さんに、少なからず抱き始めていた殺意がサッと消え頭の中も真っ白になり訳が分からなくなってしまう。
帯刀さんの考えていることが、まったく分からない。
思えばさっきからそうだったかも?
きつい事言っている割りには、私のことなんだかんだで信じてくれている。
こう言う人をきっと喰えない人だって言うんだろうな。