夢幻なる絆
□1.出会い
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「もう少し頭冷やしたら戻ろう。本人の前で爆発しないでよかった」
冷静になり最悪事態にならなかったことを、心の底から安堵し桜を見上げる。
言葉と言うのは、諸刃の剣。
下手をすればどんな武器よりも、殺傷力は偉大だ。
それで私は何度取り返しのつかないことをしたことだろうか?
私って頭に血が上ると、何を言うか分からない人だから。
いい加減にこの性格を直したいと思うんだけれど、これがなかなか難しいんだよね。
「ニャ〜ン」
「どうしたの、仔猫ちゃん?やだ怪我してる」
そんな思いに浸っているといきなり脅えた三毛の仔猫ちゃんが、私に助けを求めるように寄り添う。
あまりの愛らしさに我慢できず抱き上げると、前足がすりむいて怪我している。
だから私は仔猫を膝に置き、ハンカチを破き怪我している所に巻き付け応急処置をした。
「帰ったら、ちゃんと消毒してあげるからね。・・・帯刀さん、許してくれるか」
「ニャン」
「仔猫ちゃん、何をそんなに脅えてる・・・は?」
いきなり仔猫は脅えだし不思議に思った私はそう言いながら視線を前に向けた瞬間、ありえない物体に目が点になり思考回路が数秒停止。
ありえない物体・・・。
それは外見武士だけれども、それにしてはどうも様子がおかしい。
生命反応がまったく感じられない。
この世の者とは思えない者。
と言うことはつまり・・・?
「ひぃぃ〜、出た〜!!」
物体の予想が付いた私は顔から血の気がサッと引き、仔猫ちゃんを抱きあげ全速力で逃げだす。
怨霊もそんな私に狙いを定めたらしく、背後から殺気を感じ私はますます焦ってしまう。
運動音痴でのろまな私がどこまで逃げ切れるのか分からないけれど、それでも最後まで私は諦めない。
以前帯刀さんが私を怨霊と言ったのは冗談だと思っていたけれど、こうして本当に存在している。
帯刀さん、あなたを疑ってごめんなさい。
もう二度と疑ったりしません。