夢幻なる絆

□その後 熊野編
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「ねぇ崇は熊野の暮らしになれた?」
「だいぶね?ゲームがないのは辛いけれど、充実した毎日を送っているよ。僕ね商売に向いてるみたいだから、もう少ししたら貿易の仕事を教えてもらうんだ」

今日のバレンタインデートは海に行こうと言うことになりふっと思ったことを聞いてみると、崇は立ち止まり目をキラキラさせながら楽しそうに答えてくれる。
もし熊野が合わなくて元の世界に戻りたいなんて言われたら困るけれど、私と同じように好きになってくれてほっとした。

「私も毎日を充実して楽しい。お父さんに言ったら私も貿易の仕事を教えてくれる?」
「あ、それナイスアイデアだよ。そしたら二人でいろんな国を回われるね」
「楽しそう」

私も貿易に興味があったから言ってみると、崇も乗り気になり話は弾む。
未来の事なんてあまり考えたことがなかっただけに、それは斬新で興味深い物だった。

少し前の私だったら新天地に行くのは怖いと思っていたけれど、今は崇と一緒ならきっとどこに行ったとしても楽しいんだと思う。
きっとそれは私が崇のことを大好きで、これからの未来にワクワクして期待してるから。

「崇、大好き」
「え、いきなりどうしたの?」

思ったことはすぐに言葉で表したくって、私はそう言って崇に抱きつく。
突然だったからなのか崇は驚き目を大きく開け頬を真っ赤に染めるけど、すぐに嫌がっているわけでもなくそんな私を抱き返してくれる。

「棟梁もお気の毒ね?ようやく戻ってきた若とマリア様が婚約者付きなんて」
「若に関して大万歳だろう?これで熊野は安泰だからな」
「それもそうだね?となるとマリア様と婚約者の行く末ね。知美様の時は棟梁が殴って十八まで伸ばしたからね」

町の人達のひそひそ話が聞こえてきて、最初の頃のお父さんを思い出す。
お父さんは崇を殴ろうとしたけれど、私が嫌だと言ったら辞めてくれた。

「なんだか恥ずかしいな」
「そう?お父さんが怖いんじゃないの?」
「マリアちゃんは相変わらずだね。ヒノエさんは確かに怖い時もあるけれど、好きだし憧れてるんだよね」

怯えないで余計恥ずかしがる崇を不思議に思い聞けば、笑われ怯えない理由だけは答えてくれる。

恥ずかしい理由は教えてくれない?
それとも?

「恥ずかしいってことは難しい」
「マリアちゃんは素直で正直者だからね。そんなマリアちゃんが僕は大好きだよ」
「ありがとう。だから崇のバレンタインは本命だよ」

理解できなくても崇が私を好きって言ってくれるのならそれでよくって、今なら良いと思いバッグから包みを取り出し崇に渡す。
お母さんに教えてもらったチョコレートケーキと市で一目見て気に入ったお揃いのブレスレット。

「やった。なかなかもらえなかったから内心ドキドキものだったんだ。ありがとうマリアちゃん」
「そうなの?誕生日の時はタイミングが大切って言われたから」
「うっ・・・そうだった。原因はボクだった」
「崇、私はこれからどうすればいいの?」

すごく喜んでくれたのは良いけれど明らかな矛盾を指摘されてしまい、これはどう考えても分かりそうもないから答えを求める。
すると崇もそれが矛盾していると気づいているため、難しい顔になり考え込んでしまう。

「・・・挨拶が終わったらがいいな」
「挨拶が終わったら。うんわかった」

考えた末に出だ答えで、タイミングを理解する。
誕生日は会ってすぐ渡したのがいけなくて、今回はなかなか渡さないからいけない。
タイミングとはそう言うことだった。

「ねぇここで開けちゃって良い?」
「いいよ」
「わぁブレスレットとチョコレートケーキだ。チョコレートケーキはマリアちゃんの手作り?」
「そうだよ。ブレスレットは私とお揃い」

早速包みを開けてくれ大げさに喜びブレスレットも填めてくれ、私の手を取りギュッと握り仲良く歩き出す。


「あれ、都姉と渓兄だ。二人もデー当たり前か」
「崇、二人が心配だから尾行しよう」
「え、尾行?だって僕達もデートって、マリアちゃん待ってよ」

 崇がお兄ちゃん達を見つけたおかげで、都が心配だった私は迷わずそう言い急ぐ。
 戸惑う崇だけれど、特に反対することなく着いてきてくれる。
 尾行していてもデートは可能。




「渓さん、好きだ」
「うん、知ってる。だってお前は熊野まで着いてきてくれたからね?」

森林の奥の奥まで二人は足を運んだ所で顔が真っ赤の都はお兄ちゃんに気持ちを伝えるのだが、お兄ちゃんはニッコリ笑顔で当然とばかりに頷きその理由を話す。
正論過ぎて私は都に余計な入れ知恵をしてしまったんじゃないかと思い始めた。

「は、なんだよ?その反応?今日のデートはもう辞め」
「それは駄目。今日はバレンタインで俺の誕生日。愛する未来の花嫁と一緒に過ごすのは当然だろう?都、ありがとう。愛してる」

怒って帰ろうとする都をお兄ちゃんは背後から抱き締め、私が聞いたことのない声で囁きキスをする。
そのキスも普通のキスではなくって、なんか音がすごいし舌が絡まって糸が出ている。

都の表情もいつもと・・・・視界が塞がれる?


「マリアちゃんは見ても聞いてもダメ。こう言うことはまだボクらには早いんだから」
「崇?」

そして崇から小声ながらも激しく怒られ、引っ張られ二人が見えなくなる所まで連れていかれる。
前にもこんなことがあった。



・・・・
凪が帯刀としていると言う夫婦の遊びのような物なんだろうか?
でも二人は夫婦ではない。

「ボクはマリアちゃんのこと世界で一番大好きだけれど、まだまだ未熟だから一人前の男になるまで待っててほしいんだ」
「ああ言うのとか夫婦の遊びは、一人前の男になるまでやらないの?」
「そう言うこと。それじゃぁダメかな?」
「いいよ。待ってるね」

前にも似たような約束をしたと思いながらも、反論する理由もないため頷き待つことにした。

それにさっきのは見ていてもしたいとは思わなかったから、崇がしてこない限りやらない。
夫婦の遊びだって、楽しいとは思えない。

「ありがとう。早く一人前になれるように頑張るね?」
「え?じゃぁ崇は私とそう言うこと早くやりたいんだ」
「・・・・・」

思いの外張り切りなぜか急ぐ崇の様子から問えば、都以上に顔を真っ赤に染まらせ何も言わず下を向くのだった。



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