夢幻なる絆

□エピローグ
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崇の両親に挨拶するため俺達は現代に戻ってくれば、以前と変わらないまるで何事もなかったような光景だった。
もちろんマリアを兵器にしようとする組織も健在。

まぁ俺達以外は消えていたのだから、当たり前と言えば当たり前か。

そして昨日崇の両親に挨拶に行った時、二人は俺達を覚えていてくれ歓迎され謝罪もされた。
なんでも連絡先を書いたメモをなくし大騒ぎになったらしい。
つまり俺が勝手に怪しまれていたと皮肉に思っていただけで、世の中はもっと優しく暖かいものなのかもしれない。
マリアと崇のこともそれなりに認めてくれたようで、

二人の気持ちが大人になるまで変わることがなかったら、我々は喜んで結婚を認める。

と言ってくれた。
これを聞き父上はなぜか崇が十八になったら結婚と言い出し、その日は崇の父親と飲み明かしたのは言うまでもないだろう。


そんな次の日。
俺は都に話があると言われ、呼び出された。



「都からデートに誘ってくれるなんて珍しいな?」
「・・・迷惑か?」

待ち合わせ場所には都が先にいて、俺はいつものように軽い気持ちで声をかける。
いつもの都なら怒って蹴りが入るのだが、今はなぜか頬をほんのり赤く染め潮らしい反応を見せる。
良くみれば化粧もしていて、可愛らしい女の子その者。
あまりにも予想外のことに都をまじまじ見つめる。
多分俺の頬も赤く染まり、柄にもなく心臓が高鳴っていく。

何が一体どうなってんだ?

「嬉しいよ。都すごく綺麗だよ」
「・・・。ついてこい」

そんな俺の心情を晒すわけには行かず、いつも通りの口調で都を誉める。
するとこれまた素直に恥ずかしいのか俺から視線を反らし、それだけ言って早歩きで先を行く。

「こっちの愛宕神社の景色は、ビルばっかだな。さすが近代社会」
「お前がそう言うと嫌みしか聞こえねぇ」
「そうか?」
「ああ。でも本当にそうだよな?なぁお前の故郷の熊野と言う場所はどう言うところなんだ?」

愛宕神社に連れてこられベンチに座りとにかく話題を作れば、相変わらずの駄目だしと思わぬ問いを聞かれる。

表情も固く緊張している。
何かあるとは思うものの、熊野の興味を持ってくれることは嬉しいことだ。
将来お前が暮らしていく場所。

「自然豊かな場所だよ。熊野の人達は気さくな人ばかりで、子供達を暖かく見守ってくれる」
「やっぱお前やヒノエさんのようなナンパなやつらが多いのか?」
「女性には優しく楽しませるのが熊野の男の嗜みだからな」
「源平時代は一夫多妻制とか言う奴だから、お前もいずれそうなるのか?」
「いいや。俺は一生都だけに愛を捧げると誓うよ」

都もその辺は普通の女性のようで一番重要なことを問うので、俺は迷いなく首を横に降り即答する。
父上が母上だけを一途に愛しているのを見ながら育ったのもあり、俺も生涯一途に愛せる女性と結婚しようと決めていた。
まぁこっちの世界に飛ばされてからはマリアを護るのに必死で、俺の結婚なんて考えられなかったけどな。

「お前が言うと相変わらず嘘クセぇ」
「ならなんて言えばいいんだ?」
「そう思ってるうちは無駄だな。でもまぁいいや。お前と一緒に熊野に行ってやるよ」
「・・・は?」

軽い口調で流すように告げられた言葉が、すんなり受け入れられず間抜けな声を吐き出してしまう。

一体今何が起こった?

「だから私も崇と同じように熊野に行ってやるって言ってんだ」

今度は顔を真っ赤に染まりながら、分かりやすい言葉で言い返される。

意味は理解するが、やっぱり受け入れられない。
最近ようやく少しずつ俺に好意を持ってくれ付き合うことになったばかりで、熊野行きはしばらくは保留だったはずなのになぜ?

「本当にいいのか?瞬と白龍の神子がいい感じになりつつあるから、自分の居場所がなくなったと勘違いをして」
「してねぇよ!そりゃ前の私だったら二人の邪魔してた。と言うか瞬を亡き者にしていたかも知れない」
「おいおい。そりゃぁいくなんでも可愛そうだろう?瞬はずーと白龍の神子に片想いしていて崇に負けてたんだからな」

都だったらありえそうな考えを口にすると、否定されるものの恐ろしい答えも付いてくる。
都だからこれもありえそうで、笑うに笑えない。

本気で白龍の神子を狙ってた口か?

「そもそもお前とマリアは組織に狙われてるんだろう?」

瞬の行方はスルーされなぜか話が急に重くなる。

「マリアは熊野へ戻る時、関わりがあったほとんどの人からの記憶は消される。残された俺だけが組織の一員のままだから狙われることはない」
「だからだ」
「正直組織なんて良く分からないが、殺しとかするんだろ?理由ない殺しなんてやって欲しくないだ。だから」
「・・・お前って普通の女だったな?」

軽く答える俺に都は深刻そうなまま心配をしてくれる。
組織の一員と言ったら誰だってそうなるのは普通かも知れなかったが、都はそうじゃないと勝手に思い込んでいた。
だから絶対怒られる台詞を言ってしまい、たちまち都の顔が怒り・・・涙を流す。

「私は真剣なんだぞ?ゆきにも相談に乗ってもらって、自分でもよく考えて答えを出した。それなのにどうしてお前は」
「ありがとう都。そんじゃお言葉に甘えて、お前を熊野に連れて行こう。そして盛大に挙式を」
「それはまだだ。熊野には行ってやるが、結婚はしばらく先だからな」

せっかくのいいムードが台無しとなり、俺は呆気に取られそれ以上突っ込む気力がなくなる。

熊野にまで付いてきてくれるが、結婚はまだ先。

やっぱり俺の未来の花嫁は最高だな。



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