夢幻なる絆

□14.選んだ道
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帯刀さんがこちらに来て3日が経ちここでの暮らしもなれたので、両親に謝罪と挨拶するため実家へと帰ることにした。

怒られるのは覚悟の上だ。

「姉貴、親父とお袋には過去に行ったと言うことになってるからな。信じてないけどな」
「だろうね?私もそう言うことにするよ。まさか二次元の世界へ行きましたとは言えないよ」
「五十歩百歩だと思うけど」
「お義兄さん、相変わらず言いにくいことをズバリと言いますね。ですがまだタイムスリップの方があり得る話ですからね」

私達だけじゃ不安だと言うこと弟夫婦もついてきてくれると言うことになり、矛盾にならないよう口裏合わせの最終確しあう。
帯刀さんには分からない理屈でも、そう言うことなのだからそれでいくしかない。
2次元・異世界よりまだ過去の方が信憑性があると思う。

「そう言うものなの?それじゃぁ私は夕凪達の話に合わせることにするよ」
「そうして下さい」

帯刀さんにしてみればどちらも大差がないらしく、そう言うことになり私達は実家に向かった。








「何しに来た?お前は幕末に行ったと聞いてるが」
「お父さんただいま。旦那さんを連れて里帰りしました」

実家に帰ればまずお父さんに会い言う割には絶対信じてないだろう覚めた口調で言われ、私はひきつった笑みでそう言葉を返し帯刀さんを盾にしてしまった。

いつもは優しいお父さんが怖い。
だとすると日頃から鬼のように怖いお母さんはどうなっている?
考えるだけで恐ろしや。
だけど約三年も行方不明だったら当たり前だよね?

「里帰りだ?それで、お前は一体誰だ?」
「親父、こんな所で、騒ぎ立てるとご近所迷惑だよ」
「そうですよ。詳しいことは中でゆっくり話しましょ」

使い物ならない姉にマジ切れ寸前の父を弟夫婦はめげることなく話を進め、無理矢理家の中に押し込んで場所をリビングに変える。




リビングにはお母さんがいたけれどすっかりやつれてしまい、一気に老け込んだことがまるわかりだった。

こんな姿を見せられると罪悪感が感じられて、雷を落とされた方がいい。

「お母さんただいま。私の旦那さんです」
「初めまして。私は小松帯刀と申します。薩摩藩の家老をしております。この度はご挨拶が遅れてしまい申し訳ありませんでした」

と帯刀さんは礼儀正しく二人に挨拶をして、土下座までいきなりする。
お父さんに殴られる覚悟は本当にあるらしい。
お父さんとお母さんは見つめあうだけで、黙って何も言わない。

私達は完全に、招かざる客。

「結婚したことを黙っててごめんなさい。こんな状況信じてもらえないと思ってたし、帯刀さんをこっちに連れてこれるなんて思ってもいなかった。今回はたまたま連れてこれたんだよ」
「今も信じてない。過去に行く?そんなSF話信じられるわけがない」
「夕凪、いい加減にしなさい。どうして駆け落ちなんてしたの?お母さん達が反対するとでも思った?そりゃ無職や犯罪者なら反対するけれど、それ以外はしないつもりだった。髪が緑に染めてたとしても」

真面目に説明してもまったく信じてもらえなくて、怒られ真実を求められる。
しかしそれが真実である以上、何も説明が出来ない。

だったらもう嘘をついて、駆け落ちしたことにした方がいいんだろうか?
昔からなにかあれば嘘をついていた私なんだから、嘘を重ねたってどうってことはない。
実際帯刀さんが過去の人であることからして嘘なんだし、世の中には優しい嘘って言うのもあるからね。

でも・・・

「お父さんお母さん、帯刀さんは過去の住人じゃありません。二次元ゲームの世界の住人です」
『はい?』
「姉貴馬鹿。何言ってんだよ」
「私が言うのもおかしいけれど、これ以上嘘は付きたくない」

今さら嘘をつくことが重荷になりすべてを暴露してしまい、両親は言うまでもなく唖然となる。




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