夢幻なる絆

□小松家育児日記
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凪、親ばかになる。


帯刀さんと私の間に娘が産まれてからと言う物、帯刀さんはすっかりイクメンで親ばか化していた。
私も梅さんの協力もあって私は育児疲れやノイローゼを感じることもなく、相変わらず幸せで楽しい毎日を送っている。


「美岬、ただいま。今日もいい子にしてましたか?」
「だぁだぁ」


帰宅するなり手洗いとうがいを済ませすぐに愛娘の元にやって来て、もろに顔を歪ませ頬ずりしながらただいまのあいさつ。
美岬にとっても大好きなパパがようやく帰ってきて偉くご機嫌だ。

私も小さい頃から今でもお父さんが大好きだから、こう言う所を見ても嫉妬することもなく微笑ましく思えるだけ。
お父さん大嫌いなんて言わないように育てたい。


「帯刀さん、お帰りなさい。そろそろ美岬に離乳食を食べさせようと思っていた所です」
「夕凪、ただいま。なら私が食べさせるよ。夕凪は少し休んでいなさい。疲れてるでしょ?」
「全然。美岬はお利口さんだし、梅さんがいるから疲れてませんよ。帯刀さんこそ疲れているんじゃないですか?」


私に対しても相変わらず優しい帯刀さんの気遣いに嬉しく思いつつも、私よりきっと何倍も疲れているだろう帯刀さんの気遣いを仕返す。

それに本当に美岬はお利口さんで、必要最低限のこと意外は滅多に泣かない。
人見知りもすることなく、いつもニコニコ笑っている。


「私は美岬の面倒を見ることで疲れは癒されるから、そんな心配はしなくてもいい」
「そうですか?なら私は梅さんの手伝いをして来ますね。美岬の離乳食はここに置いてあるので、よろしくお願いします」
「さぁ美岬、マンマにしましょうね?」
「あーあー」

本人がそれでいいと言うならそれが一番だろうから私は帯刀さんに美岬のことは任せるとして、そう言席を立ち部屋から出て勝手場に向かおうと戸を開けるとそこにはアーネストがいた。


「小松婦人、こんにちは。頼まれた物を持ってきました」
「アーネスト、いらっしゃい。いつもありがとう」


ってアーネストに紙袋を渡され、私は中身を確認してニッコリ笑顔になる。
それは以前から言って、その度に輸入してもらっている美岬の可愛い洋服達だった。
他人から見ても天使の愛らしさを兼ね備えた美岬は何を着せても可愛くて、私と帯刀さんは見境なしに服を買い今では美岬の専用衣装部屋があるぐらい。

美岬が可愛くて可愛くてしょうがない。
私と帯刀さんだけの天使。
結局私も帯刀さんに劣らない親ばかなのかも知れない。


「サトウくん、私からも礼を言わせてもらうよ。美岬のためにありがとう」
「いえいえ。それにしても美岬はお世辞抜きでcutですが、本当に小松婦人の子なんですか?」
「美岬は私がお腹を痛めて産んだ子。失礼なこと言わないでよね?」


とアーネストはニヤリと笑い冗談だとわかる問いにも関わらず、私は頬を膨らましへそを曲げ帯刀さんの隣に座る。

美岬が可愛いって誉められるのは嬉しいけれど、私の子じゃないと言われるのは最強にムカつくんだけれど。
帯刀さんの子じゃないと言われるのならまだしも、どうやったら私の子じゃないなんて疑うわけ?
つまりアーネストは私が美岬を誘拐したとか言いたいの?

「ああ゛〜あ゛〜」
「美岬?」


突然美岬が大泣きし私を激しく求めるから、私は抱き上げると美岬がギュッと力一杯胸元を掴む。
それは明らかに何かに怯えているのが分かって、優しく背中をなぜ落ち着かせようとした。
まさか美岬は私の心を読み取って、不安になっている?


「美岬、大丈夫だからね」
「サトウくん、君がおかしなことを言うから、美岬は真に受けてしまったでしょ?美岬は賢い上繊細なのだから、大好きな母親を否定されたら不安になる」
「すみません。いつもの調子でつい・・・」
「この際だからあえて言わせてもらうけれど、もう二度と妻をからかうのは止めなさい。美岬の教育上良くないのもあるけれど、以前から見ているだけでも腹立たしいよ」
「小松さんにとって小松婦人は、まだ女性だったのですね?」
「当たり前でしょ?夕凪は私の最愛の妻なんだよ」


さすがのアーネストもこれには反省したように見えたけれど、帯刀さんの警告がきっかけでお互いにダークオーラが漂い始め空気がはりつめる。
私にとっては嬉しい内容でも、二人の邪悪な殺気が怖くて過ぎで逃げ出したい。


「良かったですね小松婦人。まだ小松さんに愛されているみたいで」
「う、うん、そうだね」
「では私はこれで失礼します。美岬、今度はゆっくり私と遊びましょうね?」
「ぶー」


危うく飛び火仕掛けたけれど未遂に終わり今度は優しく美岬に話しかけるのだが、美岬は怒っているようで頬を膨らませそっぽを向く。
完全にさっきのことを私よりも根に持っている。
するとアーネストはショックを受けたのか肩をガックリ落とし、渡り廊下をトボトボと歩き帰って行くのだった。

恐るべし、美岬。


「自業自得だね。さぁ美岬はマンマの続きしようね」
「だぁだぁ」
「なら私は梅さん・・・え?」


そんなアーネストに冷たい態度でも美岬には相変わらずの笑顔を浮かばせると、すっかり機嫌を直し帯刀さんの元へ行くのだが私の指を強く握ったまま放してはくれない。
じっと私を見つめ行かないでと言ってるようで、振りほどいたら再び泣き出しそうな気がする。


「どうやら美岬は、夕凪もここにいて欲しいようだよ」
「あーあー」
「分かった。ならどこにも行かない。三人一緒にいようね」


帯刀さんも私と同じ考えでそう言われたので、私は美岬の言う通りここにいることにした。
泣いている美岬は滅茶苦茶可愛かったりするけれど、娘を不安がらせて泣かせる母親は最低だ。
それにやっぱり美岬はずっと笑顔でいて欲しい。
美岬の笑顔は私達夫婦の元気の源。


「だぁだぁ」


美岬が笑うと、私達もつられて笑う。
美岬が悲しいと私達も悲しい。
私達の世界は今では美岬中心にまわっている。

本当に私は、今も幸せなんだ。






「・・・あれ、美岬は?」


目が覚めると私は帯刀さんの腕の中にいて、まだ帯刀さんは気持ちよさそうに眠っている。
寝ぼけまくっている私はそう呟いたけれども、すぐそれが夢で美岬は存在しないことに気づく。
不意にちょっと淋しい気持ちが押し寄せてしまい、帯刀さんの胸元に頭をうずくめた。
帯刀さんのいい匂いがする。


「夕凪、どうしたの?」
「私と帯刀さんの愛娘の夢を見たんです」
「夕凪も見たんだね?美岬って言う可愛い私達の宝物」
「帯刀さんも見たんですね?しかも同じ名前です」


私の行動の気づいた帯刀さんも目覚めそう言うと、返って来た答えは驚くべき物だったけれど納得が出来た。
私と帯刀さんは心も繋がっているから、同じ夢を見ても不思議はない。
それに・・・

「だったらそれはきっと私達の未来の娘の夢に違いない。非論理的だけどね」
「私も今同じことを考えていました」
「そう?それならやっぱりそうなのかもね?・・・だったら早くその夢が現実になるよう、今まで以上子作りに励んだ方が良い」
「・・・あ朝っぱらから、な何言ってるんですか?」


またもや以心伝心で嬉しくてはしゃいでしまう私だったけれど、帯刀さんは何を思ったのかそう甘く囁きニッコリ微笑む。
あまりのことに顔を一瞬で真っ赤になり声も景気よく裏返り、鼓動も激しく高鳴って爆発寸前になる。

いきなりなんて言う?
確かにそれは当たり前のことだけれど。
今以上に励むって、どうやればいいのか分かりません。
怖くて聞きたくもないです。


「夕凪、おはよう。愛している」
「えっ?」


パニクる私に卑怯技である唇をいきなり深く奪い、私の神経を麻痺させた。
こうなると私の理性は停止し、流されるだけ流されてしまう。


その後のことは、あまり覚えていない・・・。



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