夢幻なる絆

□藤原兄妹番外編
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マリア、自由を手に入れる。


「今日まで良い子にしいたご褒美で、しばらくお前は自由に生きられることになった」
「本当に?痛いことされない?学校にいける?」
「ああ、お前のしたいことをなんでもすればいい」
「うん」

ある日私を暗い闇から明るくて広い場所へと連れ出してくれたのは、たった一人の肉親である優しいお兄ちゃんだった。

それまでの私は規則正しい繰り返されるだけの、なんの変化のないつまらないと言うべき毎日を送っていた。
同じ時間に注射を打たれたり薬を飲まされたり、あらゆる知識を詰め込まされる。
時には怨霊を闘わされて封印させられて痛い思いも沢山して、小さい時は泣いてばかりいたけれどいつの間にか私は感情をなくすすべを見つけ自分の身を守っていた。
そんな私の唯一の楽しい時間と言えば、一週間に一日だけ許されるお兄ちゃんとの面会。
お兄ちゃんは私に外の世界の出来事をいろいろ教えてくれて、こんな私に生きる希望を与えてくれた。
そんなお兄ちゃんだけが私の信じられる人だった。

「だがこの楽園は一時期的な物に過ぎない。きっとすぐに終わりが訪れて、地獄へ戻されるだろう。・・・そうなる前に俺はすべての世界を滅ぼし、誰にも邪魔されない新世界を作ってやる」
「そんな世界作れる?」
「ああ、すでに協力者は見つけ計画は進んでいる。後はあいつが目を覚ませば、すべては動き出す」

そうお兄ちゃんはは私を心配させまいと、明るい笑顔のまま教えてくれた。
私にはまったく分からないことだったけれど、お兄ちゃんにすべてを任しておけば心配なんて何もない。


二つの世界の血を流し特殊な能力を持っている私達兄妹でも、平穏に暮らせる世界が訪れるのだろうか?




「マリアです。よろしくお願いします」

登校初日。
私はお兄ちゃんに教えられた通り今日からクラスメイトになる人達の前で、自己紹介をしてお辞儀をする。
するとみんなは笑顔で拍手をしてくれ、何者か分からない私を歓迎してくれた。

初めて見る同世代の人達は私にとっては、不思議で違和感がある光景。
今まで私と関わりがあったのは怖い大人達だったから、これからこの人達と上手くやっていけるのか不安である。
でも少しだけ期待という物があり、楽しみでもあった。
学校と言う所に通うことが、私のたった一つの願いだったから。

「では藤原さんは、あそこの空いている席に座って」
「はい」

先生に言われ私は空いている席に行くと、隣になる男の子と目が合う。
こう言う時はコミュニュケーションと呼ばれる物が必要。

「ボク桐生祟。マリアちゃんのブロンドの髪はサラサラしていて綺麗だし、緑の瞳は透き通っててビー玉みたいだね」
「そう、ありがとう?」

男の子祟と言う名前で愛想良くニコニコ笑いながら誉めてくれ握手を求め、私は不思議に思いつつその手を握り握手を交わす。
すると祟は微かに表情を変えた。

「・・・やっと見つけた。ボクに未来をくれる神子・・・」
「え、祟?」
「ボクは渓さんの協力者で、君のフィアンセだよ。宜しくねボクの可愛い花嫁さん」

と祟が嬉しそうに何かを呟いたかと思えば、今度は私の耳元でそう囁き頬にキスをする。
一部のクラスメイトが声を上げたけれどそれほど騒ぎにはならず、その後何事もなかったかのように授業は始まった。

祟がお兄ちゃんの協力者で、私のフィアンセ。
そうお兄ちゃんが決めたのなら私には反対する理由はないけれど、祟は私なんかがフィアンセでいいのだろうか?


そしてその数ヶ月後お兄ちゃんと祟の新世界を作る計画が始まり、私はお兄ちゃんの指示通り異世界の江戸に時空移動したけれど・・・?




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