夢幻なる縁

□3章 四神の作り方
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 リビングに戻れば部屋全体がどんよりとした重い空気に包まれており、梓と千代は小さくなってメソメソしていてコスモと萬は困り果ててウロウロしていた。
 それは可愛いけれど予想していた以上だったため見なかったことにして研究室に一度戻りたかったけれど、この原因を作ったのは祖父母なんだから孫の私がなんとかしなければいけない

「二人ともごめんね。二人とも子供や孫に先立たれているから、残されたものの気持ちをよく分かってるんだよね?」
「帆波。そうなのね。確かに私達が命を落としたら両親や進さんが悲しむのに、私ったらそこまでよく考えてなかった。だから自分の命で世界が守れるのならそれで良いと思ってた」
「私も。でもそうじゃないことに二人は気づかせてくれた。これからはみんなで力を合わせて頑張ろうね」

 どうやらおじいちゃんの言いたかったことは分かってくれたようで、怖がられて嫌われると言う最悪事態は回避できたらしい。
 それどころか前向きになっているようだから、安心してまだ心配そうにしているコスモを抱き上げる。

 おじいちゃんは正論しか言わないけれどたまに迫力あるキツい言い方をして誤解されることがある。
 本当はとっても優しい人なんだよね。

「もちろんよ。じゃぁ三十分後に集合して出掛けましょうか?」
「私のこともどんどん頼ってね? うん。萬、ちょっと手伝って欲しいことがあるんだけれど、いいかな?」
「はい、解りました」

 神子同士の絆がさらに強まったところで貴重な自由時間を使って、萬と作戦を練ることにし了解をもらう。
 以前と違っていちいち梓に確認を取らなくなったのは、記憶が戻ったのか梓のおかげなのか。




「萬、今日は博士と会うの?」
「はい。昼間の休憩時間に」
「そう。新しい盗聴機をだけどもうネタバレしてるから、いくらなんでもそれはないか。だとしたら別の何か? 黒龍に頼んでテレパシーで心を読み取るようにしたら、もう対策のしようがないな?」

 研究室で単刀直入に話を切り出し答えに今後の動くを予測するけれど、なかなか難しくすでに詰んでいるんじゃないかってことに気づく。

 四神よりも上位の黒龍が味方についている以上あちらさんが本気を出してしまえば完敗に等しい。
 それともなんとか互角にやりあえる?

「シスターはどうして博士の力になってあげないのですか? 記憶が戻ったと伝えれば、博士はきっとシスターの力になってくれるはずです」
「でもそしたら博士が黒龍に殺されちゃうじゃない? きっと今の黒龍は生易しくなくって結果ありきだから、ちゃんとした対策を見つけ説得しないと無理。そもそも私じゃ博士を癒せない」
「申し訳ございません」

 萬は真剣な眼差しで見つめながら必死になって私を説得するのを認める訳には行かない私は負けじと言い返せば、萬はすぐに自分が悪いと勘違いしたらしく反射的に誤り小さくなって反省する。
 自分は間違っていないのだから反論したって良いのに、偏屈屋の博士のせいで萬はこうなってしまった。

「そんな顔をしないでよ。それに博士には藤原帆波として好きになってもらいたいからね」
「シスターらしいですね。ですが、博士ならきっと」
「ワン、ワン」
「え、コスモ?」

 萬の落ち込んだ表情を見るのは私には耐えられなくつい格好いいことを言い対処するとすぐに復活してくれホッとしたのは束の間で、何かが割れる音とコスモの驚いた声が聞こえた。、
 一体何をしでかしたしたと思いコスモがいる方に目をやると、そこにはコスモがいなくなっいて変わりに頭上が濡れた素っ裸の少女がいた。
 怯えた瞳の少女は私を見ているけれど何か違和感を感じたらしく、不思議そうに自分の手を見だし驚きその場を一周する。




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