夢幻なる縁

□3章 四神の作り方
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「早朝の散歩もいいわね?」
「そうだね? でも本当は昼間連れてこれたら良いんだけど、コスモは臆病だから難しいんだよね」
「そうなの? まぁまだ子犬だから仕方がないわよ」

 浅草寺まで仲良く散歩中の千代にそんなことを言われたけれど、早起きが苦手な私は苦笑しながら本音を漏らす。

 早起きが苦手な原因は間違えなく夜更かし。
 四時前に寝て八時に起きるのが基本で、徹夜だってざらにある。
 今は散歩があるから二時前には寝て五時半には起きるようにしている。
 なんせコスモの臆病は筋金入りで今はご機嫌に散歩を楽しんでいるようだけど、聞きなれない音がすると驚き怯え私の背後に隠れてしまう。
 だから怨霊なんてみたりしたら気絶して、みんなに迷惑を掛けることは目に見えている。
 千夜の言うとおり子犬限定ならいいんだけどね?

「帆波?」
「うん、分かってる」

 突然怨霊の気配を察知した。

 こんな八葉がいない所で怨霊と遭遇するなんて、今日は朝からついていない。

「四神はいる?」
「玄武がいる。ここは私と玄武で弱らせるから千代は封印して。後コスモをお願い」
「分かったわ。コスモ、大丈夫だからね」

 首に巻き付いている玄武を持ちそう言いながらコスモのことも頼むと、千代は頷きまだ分かっていないコスモを抱いて一歩さがる。
 玄武は誰もいないことを確認し、人の姿に変わった。

 玄武にとって不利な相手だとは思うけれど、たかが怨霊なんだから大丈夫だよね?

「もちろんだ。帆波と力を合わせれば、我らは無敵。白龍の神子は美味しい所だけ持っていけば良い」

 私の心を読み取った玄武は胸を張って言い切りギュッと私の手を握る。
 その台詞と行動は今玄武がハマっているラノベの一小節だったりするから、不意打ちにも関わらず笑いを堪えるのに精一杯だった。

「そうなの? 帆波と玄武は本当に仲良しね」

 真相を知らない千代は微笑みそう言ってくれるけれど、知ったらきっと微笑みはひきつるのだろう。
 確かに私達は仲良しだけれど。

「ねぇ玄武。ひょっとして手を繋いだまま戦うの?」
「無論。こうすれば絆のパワーが強まって楽に戦えると書いてあった」
「………」

 おばあちゃん同等の洗脳されやすさに私の頭を悩ませ、もうどうでも良くなり玄武にすべてを委すことにした。



 しかし玄武は神様で私は四神の神子だからなのか手を繋いだままでも違和感なく闘え、怨霊はあっと言う間に千代によって封印される。
 本当に手を繋いで闘うことは、有利なんだと知った。

「帆波、凄かっただろう?」
「うん。これからは手を繋いで闘おう。千代もそうする?」
「え、恥ずかしいし進さんに悪いわ」
「うっ……だったら私もいざと言うとき以外は辞めとこう」
「なぜなのだ?」

 新たな発見に少々ハイテーションになり千代にも進めるけれど、冷静な千代にごもっとな意見を答えられすぐに便乗。
 玄武には意味が分からず悲しげに突っ込みをいれる。
 もちろん手を繋いだだけじゃ恥ずかしくなくても、もし博士に見られたと思うと嫌だった。
 博士にしてみればなんともない……それはそれでショックを受けると思う。

「帆波もすっかり恋する少女ね? 可愛い」
「もうからかわないで。 コスモは大丈夫?」
「ワンワン」

 一方千代はすべてを察してくれそれはそれで恥ずかしくてコスモを呼ぶと、草むらからひょっこり顔を出し元気一杯に吠え私に寄り添う。
 意外にも元気そうでホッとし抱き上げれば、玄武はじっーとこちらを見つめてくる。

「コスモだけずるい」
「え?」
「玄武は甘えん坊なのね」
「そうだ。私は甘えん坊で誉められて伸びるタイプなのだ」
「そうだったね。玄武、ありがとう」

 コスモを羨ましがりいじける玄武をほっとげず頭をなぜお礼をすれば、とびっきりの笑顔を浮かべ抱きつかれる。

 玄武の笑顔は相変わらず天使で元気をくれます。
 恋愛対象ではなくって確実に私の癒やしです。



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