夢幻なる縁

□3章 四神の作り方
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 それから私達は三神を呼び寄せれば、おばあちゃんとおじいちゃんとコスモまで着いてきてしまった。

「やっぱり二人は帰りなよ。相手は未来の黒龍なんだよ」
「だから来たんでしょ? 神子様達と八葉がいるならまだしも、四神だけって正気なの?」
「まぁそれは確かにそうだけど……」

 もうすぐ黒龍とのご対面と言う場面で最後の警告とばかりに警告をしたのに、逆にこっちが正論を言われてしまい口ごもる。

 こういう危機のためにいるだろう神子と八葉なのに私はなぜ彼女らに頼らなかった?
私情に巻き込みたくなかったとしても、相手は怒り狂った黒龍。

 ひょっとしたら私と尚哉さんに死亡フラグ立っていませんか?

「もし生け贄で黒龍の怒りが収まるのなら、私と夕凪がその役目を引き受けるから」
「ちょっと何冗談を言ってるの? 生け贄なんて縁起でもないこと……」

 良くないと言おうとしたけれど、実際尚哉さんがそう言う契約をしているのを思い出す。
 だから冗談でも縁起でもないことじゃない。
 十分あり得る話。
 もしかしたら黒龍は?

「尚哉さんに玄武?」

 胸騒ぎの原因はこれだと直感し、玄武の気配がする方に急ぐ。
 まだ気配は弱ってもないから大丈夫だとは思うけれど、尚哉さんの方は分からない。

「帆波、待ちなさい。あなたには私達四神とコスモがいるのです。あなたがそこまで真剣に藤堂尚哉を愛していると言うのならば、私達は彼のことも全力で守ると約束いたしましょう」
「そうだな。帆波には凪同様幸せになってもらいたいからな」
「帆波が選んだ相手なのだから仕方がないな」
「うん。ママの笑顔はみんな大好きなんだよ」
「みんな、ありがとう」

 そんな私の腕をつかみ朱雀は思いもよらぬいや朱雀はともかく、青龍と白虎までもが黒い空気がなく見守っていてくれると言う。
 コスモはにこりと笑い嬉しそうにピョンピョンと跳ねる。
 なんだかみんなの優しさが心の奥が暖かくなり涙が溢れるが、


「……これって立派な死亡フラグの気がする……」
「夕凪、茶化さない。それにそれは私達の役目でしょ?」
「そうですよね? 帯刀さん、一人でその役目を背負わないで下さい」
「分かってるよ。それにどちらかと言うと元四神の神子の夕凪の方が相応しいからね」

 死を覚悟した人間は強いと言うけれど、この二人はなんて言うか緊張感がまったくない気がする。
 二人で死ねるならば、怖くないとか?

「今日は何も言わないの?」
「何を言っても無駄だった。だから諦めた」
「もちろん最大限の手は尽くしますよ」
「無論。凪も我らにとっては大切な人の子」

 なぜか今は静かな青龍と白虎に聞いてみるとようやく理解したのかと言いたいことをため息混じりで呟くけれど、結局根本的なことは変わってなくどこか羨ましそうでもあった。
なんだかんだと言っても四神達の一番はおばあちゃんのようで、そう言う彼らを見てると微笑ましい。

「私の一番はママだからね」
「そう? ありがとうコスモ」

 別に羨ましいなんて思ってないのにコスモはそう言って思いっきりだきつく。

 焦っていた私の心はいつの間にかゆとりが出来ていい感じになるけれど、一瞬にして空気が重くなりピリピリとはりつめても行く。
 明らかに何かあったと言う警告。

「え、尚哉さん?」
「帆波、待っていてと言ったのに来たんだ。しかもクローバーとやらや帯刀さん達までも引き連れてちょっと大袈裟じゃない?」
「それだけ心配だったんです。交渉はうまくいきましたか? 」

 気配なく突然姿を見せる尚哉さんに違和感を感じるも、その姿を見るなり安堵してしまい警戒心を捨てる。
 だって尚哉さんの笑顔が見られるだけで、私は幸せになれるから。

 ……なんだ。
 私は別に偽りでも尚哉さんに愛されたいだけなんだ。

「もちろん。私を誰だと思ってるの?」
「そうでしたね。なら私はみんなのところに戻ります」
「それがいい。けど今夜の約束を忘れずにね」
「はい」

 得意気に話す尚哉さんに私の顔に笑顔が戻りギャラリーがいるのを忘れ、約束の証とばかりにキスを交わしてしまう。
 優しくて甘いキスの味と同時に、気のせいなのかほんの少し重い嫌な気も感じた。



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