夢幻なる縁
□3章 四神の作り方
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「それじゃぁみんなの所に行きましょうか? 青龍に頼めば一瞬で追いつくはずです」
「そうなのか? でも藤堂はどうする?」
「ほっとけばそのうち意識が回復するでしょ?」
「いいのか。それで?」
「はい。それじゃ青龍よろしくね」
優しくて理由知らない九段さんだから博士のこと親身に心配するのに対し、怒りと悲しみしかない私は却下し青龍を呼び直す。
「やはり帆波はここに残るべきだ。理由はどうあれ暴力はいけないと思う」
「え、まぁ……そうですよね」
そんな私を九段さんは真顔で説教してきて、少しだけ我に返り少なからず罪悪感を生まれる。
昔から私はカッとなるとすぐに拳が出てしまい、博士に対しても何度か殴ってしまった。
こんな暴力女を博士が好きになってくれるはずないよね?
亜理紗さん見たいな人になんてなれない。
「萩尾九段。我らだけで行ってよう。我が白龍の神子にやり方を教える」
「宜しく頼む」
青龍は珍しく気を使い九段さんをつれ消えていく。
と言っても博士を見張っている玄武がいるから、危険と言う危機感はないのだろう。
「私は博士が好きです。人前では強がってても本当はすごく弱くて優しいところも全部大好きです。……私が博士と黒龍を奈落の底から救うつもりでいるので、帝都を破滅の道に歩ませるのだけは辞めてください」
玄武にも手伝ってもらい博士を木陰に連れていき、恥ずかしいけれど膝枕して回復を待つ。
心臓がありえないほど高鳴るけれど、すごく幸せでつい本音を漏らし頬にそっとキスをする。
もう博士には悲しい思いをさせたくない。
博士の大切なものは私が守って見せる。
そこに私が含まれないとしても。
「……姫? やっぱり姫なんだね」
「博士?」
「あの時はすまない。もう僕にとっては亜理紗はただの初恋の想い出に過ぎないんだ。今もこれから先も僕が愛しているのは姫だけだから」
「………」
目覚めた博士は明らかにおかしくて完全に勘違いされているけれど、すごく弱っているのがよく分かって振りきることは出来ず何も言えなくなる。
今もこれから先も僕が愛してるのは姫だけ。
私のことなんてやっぱりなんとも思ってないんだね?
「? 嬉しくないの?」
戸惑い黙ってる私に博士は不思議そうにそう言うと、ギッュと抱きしめ唇が重なり合う。
よく知った博士の甘い味と匂いに心は酔ってしまい、博士が幸せなら偽ることにした。
「そうですね? でもこれからは帆波と呼んで下さい」
「分かった。なら僕のことも尚哉のままだよ」
「分かりました」
呼び名はあっさり変えてくれるけれど、私と姫はそんなに似ていただろうか?
親友なのに姫の顔がなぜか思い出せない。
たまに本当に存在していたのかと思う時があるけれど、それは間違えなく私の願望。
もし姫が私だったら、博士はきっと私を選んでくれた………と思う
「帆波は僕がこれからやろうとしてることを知ってるんだよね?」
「はい。萬から聞きました。それで私なりにいろいろ解決策を探してる最中です」
「それなら僕だって探したよ。でも何も見つからなかった。未来を救うには、この時代で開戦をしてもらうしか残されてないんだ」
もう隠す必要はないので隠さずに答えるけれど、尚哉さんはまた辛そうな表情を浮かべ悲しそうに呟ききつく抱きしめられた。
手が震えているのも良く分かり、心の底から安堵しその手を握る。
やっぱり博士は優しい人だ。
ちゃんと悩んで苦しんでくれた。
「尚哉さんはラスボスに向いていませんよ。だから今度は私と二人で考えましょ? 二つの世界を救える道を。二人でならきっと見つかります」
一人で出来ないことでも二人ならなんだって出来る。
それに私は四神の神子。
「そうだね? だったら僕は黒龍と再契約をしてくるよ」
「なら私も」
「一人だけでいかせてくれ。これは僕が撒いたことなんだから」
「分かりました」
男らしさを見せる尚哉さんに華を持たせようと思いつつ、胸騒ぎがするので後を付けることにした。
そして私達は最後は熱烈なキスをして、尚哉さんを見送る。