夢幻なる縁

□3章 四神の作り方
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「やっぱりこの箱は二重底になっている。千代が一つ目の呪詛を浄化したら、今度は千代を蝕むもう一つの呪詛が作動する仕組みね。私が同行して正解だったみたい」
「そうなのか? それでは千代の身が危険だな。どうすればいい?」
「そんなの簡単です。一気に粉砕します。そして残った呪詛を除霊すれば大丈夫なはずです。九段さん、呪詛が飛び散らないよう呪詛のの箱に結界を張って下さい」
「任せておけ」

 なんて言うか禍々しい邪気を放した呪詛の箱は軽く調べれば二重底の構造で、用意していた特性の爆弾シートを取り出し箱全体に貼り付ける。
 これでいくら二重底になっていたとしても、一度に強力な力を加えれば二つの呪詛は混じり合う。
 それでもって計算上軽減されるはず。

「点火!!」

ボァン

 呪詛の箱は結界の中で塵となり予想通り嫌な感じはだいぶ薄れ、この分だと浄化をするのも簡単だと思う。

 ……浄化したら第三の仕掛けが作動しないよね?

 博士のことだからそう言う可能性も十分あり得るはずだけれど、本当は優しい人だからそこまで惨いことをやるとは思わない。
 もっと精神的に追い込まれれば、何しでかすか分からない弱い人だけど。

「念のため浄化も私がします」
『え?』

 千代に何かあったら大変だからまずは私が名乗りを上げ、驚くみんなを気にせず結界に触れると嫌な感じは私の体内へと吸収される。
 初めて試してみたけれど、……うん、そんなに悪い気分ではない。

「四神の神子って浄化も出来るんですね。だけど今のやり方って危険なんじゃ……」
「弱いの限定だけどね。四神の神子は体内に吸収することで浄化する能力だからね。私なら平気。でしょ、青龍?」
「ああ。だから安心して良い」

 心配してくれる梓に私の言葉だけじゃ信用ないと思い、青龍にも強力してもらいお墨付きをもらう。
 これがおばあちゃんだったら数日寝込むだろうけれど、それを言ったらますます心配されるので言わない。
 私は寝込んだりしないけれど。

「さすがママだね。でもどこも痛くない?」
「どこも痛くない。そう言うわけだから、次の呪詛の箱を探しに行こう」
「探すのは構わんが、浄化は駄目だ。いくら帆波であっても浄化は一日置きだ」
「え、そうなの? わかったそうする」

 目をきらきら輝かせたコスモは私のことを尊敬しつつ心配してくれるけれど、特に体調の異変は感じられないから次に行こうとすれば、青龍は珍しくきつい口調で止めに入るのでここは素直に頷いて言うことを聞く。

 青龍は私のことをちゃんと考えてくれているから嘘はついてないだろうし、今はまだそんなに焦ることでもない。

「ねぇ帆波、今のやり方なら私が浄化しても大丈夫なのよね?」
「私にも出来たんだから、千代なら朝飯前だと思うよ。青龍、千代だったらどのぐらい?」
「白龍の神子でも一日一回」
「だって。じゃぁ次は千代ね」

 千代のやる気を大切にしたいため、第三のトラップも悪影響もないので任せることにする。
 本来ならばこれは千代の役目だから、私があまり出しゃばるわけにも行かない。
 そしてそう言うことならと梓を見れば、やっぱり少し寂しそうな表情を浮かべていたため、私はノートパソコンを開きこの結果を打ち込む。

「帆波さん、何をしてるんでしょうか?」
「え、帝都の状況を調べてるの。今までした怨霊討伐のデータをインプットしているのと、あらゆる場所に測定器をばらまいているから、五行の力と陰陽の割合それから怨霊の強さも分かるの」
「ほぉ、さすが女エジソンだな。それで何が分かった?」
「今まで通り怨霊退治はもちろんですが、どうやらこの呪詛の箱は少し陽の力が大きくて適度に陰をばらまいた方が良いみたいです」

 すっかり村雨さんには女エジソンと言う通称が定番となりそれは悪い気分はしないので触れずに、はじき出された結果を見て梓にしか出来ない役目を試す。
 すると梓の表情がパッと晴れ、ノートパソコンの画面をのぞき込む。

「分かりました。私も頑張ります」

 千代同様張り切り気合いに満ちあふれていた。


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