夢日記

□本編
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「駄目だ。駄目だ」

再び夢の中でようやく法住寺にたどり着き、九郎君にこれからの話し合いの結果を話せばこの通り駄目の一点張り。

ゲーム通りだとは言え、頑固すぎなんだよこの人。
侍魂丸出しと言うか、融通聞かないって言うか。
女性を甘く見てるといつか痛い目にあうよ。

「なんで駄目なの?」

夢だと分かっていても、本気になって言い争ってしまう。
売り言葉に買い言葉状態だ。

「戦は遊びじゃないんだぞ?女・子供など連れて行ったら足手まといになるだけだ」
「そんなの女性に対して失礼だわ」

女などの言葉に余計切れてしまい、あたしは今まで以上に声を張り上げた。
差別なんて言葉大嫌い。
九郎君はあまりのことに驚き一歩後退した。
この時点でこの言い争いの、勝敗は決まった。
もちろんあたしの勝ち。

「な、ならお前の実力を見せてみろ。それで俺が判断する。それなら文句ないだろう?」

ほらね。
こう来れば、あたしの思うつぼよ

「分かったわ。その提案乗って上げる」

偉そうに承諾するあたしに、九郎君と白龍以外のメンバーは苦笑していた。

「なら俺について来い」

多分相当怒っている九郎君はムスッとした顔でそれだけ言い部屋を後にする。

「外山先輩、そんなこと言ってしまった大丈夫なんですか?」

あたしも後に続き外に出ようとした時、心配そうに寄ってくる譲君にそう訪ねられる。

相変わらず心配性で、可愛いんだから。
あたしの弟が譲君見たかったら良かったのにな。

「うん。大丈夫。九郎君をギャフンって言わせてやるんだから」

あたしはガッツポーズを見せ、やる気満々で答えた。 




九郎君に連れられ訪れたのはやっぱり神泉苑の桜が咲き乱れる場所だった。
下鴨神社の桜も綺麗だったけど、こっちも綺麗だな。

「いいか?これからお前の腕前を試す。まずは俺が手本を見せる。見せ物にするのは本意ではないのだが」
「……なら見せなきゃ良いじゃん……」

プレイ中なども呟いた言葉を、ついぼそりと呟いてしまった。

「なんか言ったか?」

聞こえてしまったらしく九郎君は鋭い視線であたしを睨み付ける。

「いいえ。別に」

怖かったので、大きく首を横に振った。

言葉には気を付けよう。

「ならいい」

そう言って気お取り直した九郎君は、鞘から刀を抜き鮮やかで更に素早く散っている桜の花びらを割いた。

「を〜」

あまりにも見事な光景に、あたしは思わず声を上てしまう。

これがリズ先生直伝の『桜断ち』か。
望美じゃないけど、なんか九郎君の剣さばきって綺麗。

「お前にこれが出来たら、認めてやってもいい」
「クッッ」

偉そうな態度の九郎君に、あたしは不気味な笑みを漏す。

現実だったら到底無理に決まってるけど、ここならなんだって朝飯前。
あたしに叶う人なんていない。
そう思いながらあたしも剣を抜き、鮮やかなポーズで舞い落ちる花びらを裂いて見た。
周りから歓声が巻き起こる。

「……言うだけのことはあるな」

これには九郎君もあたしを認めざるおえなかったのか、眉間にしわを寄せながらもそう言った。
もっと素直に認めてくれても良いのに。

「じゃぁ?」
「ああ、許可する。約束だからな」

そう言って初めて、九郎君が笑った。
彼も笑うと可愛いんだよね。

「良かったですね。雫さん」
「はい。これからもよろしくお願いしますね。弁慶さん」

弁慶さんも微笑み喜んでくれてたので、あたしはもっと嬉しくなってしまった。

今のあたしって、なんて幸せなの?

「所でお前のもしかして」

話は急に本題に入った。

「はい、リズ先生に教わったよ」

嘘である。
しかしこうでも言わなきゃ、リズ先生が出てこなくなってしまう。
もしリズ先生が出なかったら、この夢ってこれからどうなるんだろうか?
それも面白そうだけど、リズ先生も見てみたいからやめた。

「やはりな。それで先生はどこに?」
「そんなの神出鬼没だから分からないよ」

無責任なことを言う。

「そうか」

適当な答えにも関わらず、九郎君はがっかりしながらも納得してくれたようだ。

「でもそのうち現れると思いますよ。リズ先生も八葉の一人だもん」

これもまた半分は適当だが、鞍馬と答えたってどうせ現れないし無駄足になるだけだ。

「何、それは本当なのか?」
「うん。ねぇ白龍」
「そうだよ。だからきっと会えるよ」

あたしと白龍は気楽に答える。

リズ先生はあたしが念じたら出てくるんだろうか?
それとも再びここを訪れた時に、現れるのかな?

「だったら今日の所は今日屋敷に戻りましょう」

譲君が言ったのであたし達は、朔んちに一度戻ることにしたが、

「神子、誰かいるよ」

白龍がそう言ったので、あたし達は足を止め振り返る。
そこには何やら、人の気配がする。

「雫。あそこに先生が」

九郎君の顔がたちまち子供のような無邪気な笑みを浮かべる。

「あ、本当だ。リズ先生だ」

あたしもリズ先生を見つけ、急いで駆け寄った。

あたしの願いが叶ったのかな?

「先生、ご無沙汰しております」
「……息災のようだな」

分かってたけど、でかい人である。

「先生もお代わりなく何よりです。先生、その頬にあるのは、やっぱり先生も八葉なんですね」

九郎君の台詞に、あたしはちょっと頭に来た。

その言い方って、もしやあたしのこと信じてくれてなかったとか?
酷すぎるよ、九郎君。

「無論」
「リズ先生。私達には先生の力が必要なんです。仲間になってくれないでしょうか?」
「八葉は神子のためにある。そう神子が望めば、私は従おう」

玄武コンビだけ、相変わらずキャラ設定が変わってないんだよね。

そんな神子絶対忠誠でいいんだろうか?

「ありがとうございます。これからも宜しくお願いします」

とあたしは一応お礼を言った。

これでリズ先生は、ゲット出来たんだ



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