夢幻なる絆

□9.白龍の神子の娘
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「凪さん、いらっしゃい。龍馬さんも来ていますよ」
「お邪魔します。龍馬が?」
「よう凪久しぶり」

南方先生に言われて通り仁友堂に訪れると南方先生が出迎えてくれて、後から龍馬もひょっこり顔を出しやっぱり私を出迎えてくれる。

龍馬とも会いたかったから、探す手間が省けてラッキー。
とにかく元気そうで何よりだ。

「久しぶり」
「帯刀はどうした?」
「藩邸に戻ったよ」
「そうか。せっかく待ち焦がれていた愛しの妻のご帰宅なのにな」
「忙しい人ですから仕方がありませんよ。でもさっき会いましたが、とっても嬉しそうで生き生きしてましたよ」

龍馬だけならいつものことだからともかく南方先生までもがそう言い出すから、恥ずかし過ぎて体全体が熱くなりどうしていいか分からず視線を不自然に泳がせる。
もちろんそれは嬉しいことで南方先生だから深い意味はないと思うんだけれど、生き生きって言葉がちょっとやましく聞こえるんだよね?
確かに昨夜の帯刀さんは生き生きしてた。

「な、南方先生。診察で凪が妊娠してるのか分からないのかよ?」
「え?」
「それは私の専門外ですけれど、凪さんどうなんですか?」

私の考えを読み取ったのかニヤニヤして更に恥ずかしいことを聞き、南方先生は普通に受け答えして問診をここで始める。
南方先生はお医者さんで、私は表向きはもうすぐ一年の妻。
それは当然なことかもしれない。

「南方先生、龍馬さん、そう言うことをこんな所で聞くのは、あまりにも非常識で失礼なことですよ。凪様、行きましょう」

天の助けかそこにお冠の咲ちゃんがやって来て、デリカシーの欠片もない二人から私を救いだしてくれた。
答えに困り果てていた私にとって、咲ちゃんが女神様に見える。



「咲ちゃん、ありがとう」
「あの二人は、相変わらず女心が分かってないのですよ」
「そうだね。確かに可能性はあるにはあって確かめて見たいけれど、時期的にまだ早いんだよね」

咲ちゃんの部屋に連れてきてもらい後一服の咲ちゃんに、さっきは言えなかった大切な本音を語る。
ここでは私と帯刀さんがしたのは四ヶ月と少し前だけれど、私にとってはまだ一ヶ月ぐらいしか経ってない。
確かにあの日はまだ来てないけれど、元々私は不規則でしかも遅い。
だから疑うとしたら、再来週ぐらいから?

「凪様はやはり小松様の子が欲しいのですね?」
「もちろん。二人の血が流れた子がこの世に存在するって、考えたらすごい神秘的なことじゃない?」
「ええ、分かります。凪様ならきっと良い母親になると思います」
「だと良いんだけどね」

とまだ妊娠もしていない子供のことを興奮気味で壮大に話す私を、咲ちゃんは微笑みながら聞いてくれ嬉しいことまで言ってくれる。

それは優しい咲ちゃんだからそう言ってくれるんであって、私を知っている多くの人達は危なっかしいと言うだろう。
自分でも全力で子育てに奮闘するつもりだけれど、・・・危ないかも知れないと思う。
帯刀さんと梅さんに協力してもらえば、きっとなんとかやっていけるはずだ。




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