夢幻なる絆

□9.白龍の神子の娘
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「ごちそうさまでした。やっぱ梅さんの料理は最高ですね」
「そうだね。だけど私は妻の手料理の方が好きだよ。今夜は期待してもいい?」
「はい、任せて下さい」

昼食を綺麗に完食しニッコリ笑顔で絶賛していると、帯刀さんは頷きながらもそんなことも言って微笑む。
帯刀さんだけにしか分からない理解しがたい理屈だけれど、私には嬉しくて胸を張り安請け合いしてしまう。
私の料理を期待してくれるのなら、私は全力で失敗しないよう頑張るだけ。
料理の腕がなくても、その分愛情でカバー出来る。


「楽しみにしてる。なら私は藩邸に戻ることにする」
「え、あはい。・・・政務頑張って下さい」

突然当たり前のことを切り出し席を立つ帯刀さんを、私は寂しさを隠しながら見送ろうとする。
帯刀さんが多忙だってことぐらい分かっているのに、寂しいなんて私って相変わらずダメダメ奥様だな。
しっかりしないと。

「土産に薩摩藩で話題になっている菓子を買ってくるから、一緒に食べよう」
「は・・・いりません」
「え、夕凪?」
「帯刀さんは甘い物苦手なんですよね?だから無理しなくてもいいです」

菓子と言う言葉に反射的に頷きかけたけれど、雪ちゃんの言葉を思い出し遠慮する。
そんな私の反応を驚く帯刀さんに、視線をそらしながらも核心を問う。

私にだけ買ってくるのなら大歓迎でも、一緒に食べるのはさすがに悪い。

「確かに私だけなら好んでは食べないけれど、夕凪と食べるのなら悪くないと思っている」
「本当ですか?」
「夕凪に遠慮してどうするの?私達は夫婦なのだから、遠慮するなどおかしいでしょ?」
「それもそうですね。なら楽しみに待ってます」

まだ腑に落ちない点があるにはあるけれどもそう言うことにして、今度は素直にお土産を楽しみにしてることにした。

夫婦だから遠慮はなし。
帯刀さんはそう思ってくれてたんだね。
なんかそう言うのって、嬉しいな。
私もこれからは遠慮・・・もとからしてないか。

「それでいい。夕凪の笑顔は私の元気の源だからね」
「帯刀さん。外まで見送りします」
「もちろんいってらっしゃいの口付けもね」
「はい」

すっかり機嫌を良くした私はそう言いながらピョンと立ち上がると 、帯刀さんは楽しそうにそう要求してくるので快く頷く。
それは当たり前のことで、妻である私にしか出来ないこと。





「いってらっしゃい。帯刀さん」
「ああ、いってくる。南方先生達の迷惑にならないようにするんだよ」
「分かってます。あ、私咲ちゃんに全部話すつもりですが、いいですよね?」

いってらっしゃいのキスをして馬に乗った帯刀さんにそう言われ、了解とこれからやろうとしていることを隠さずに話す。
私を覚えていてくれた咲ちゃんなんだから、これからもっと親交を深めていきたい。
もちろん迷惑ではなければの話なんだけれど。

「いいよ。咲くんだったら、夕凪を理解してくれるからね」
「ありがとうございます」

いつもと違って呆気ない程簡単に許可がおりて帯刀さんは出掛けていくから、私は視界から姿が見えなくなるまで手を振り見送った。



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