夢幻なる絆

□9.白龍の神子の娘
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「着いたよ。ここが私達の新居」
「え、ここって・・・」

馬に揺られることしばらくしてやってきたのは、見覚えがある場所だった。
場所が場所だけ少々驚くと同時に、薩摩藩邸から結構遠い。
ここを新居にして本当に大丈夫なんだろうか?

「そうだよ。ここなら夕凪はありのままの夕凪で暮らせる環境が揃ってるからね」
「つまり私のためにここを選んでくれたんですか?」
「それ以外に何を基準にして選べばいいの?」

と帯刀さんは答えながら馬から降り次に私を降ろしてくれると、隣の家からお久し振りの南方先生が顔を出し私達と視線が合う。
そうここは仁友堂の隣だった。

「凪さん、お帰りなさい」
「ただいま。南方先生」

ニコニコしながら私達の元に南方先生はやって来て当たり前のように私を歓迎してくれ、私は嬉しくて笑顔が浮かび返事を返す。

お隣さんが南方先生だったら、新天地の生活でも楽しく暮らせそうだ。

あ、だから帯刀さんは、私のためにわざわざここを選んでくれたんだね。
帯刀さんはいつも私のことを考えてくれて、限りない沢山の愛情を注いでくれてる。
私はそんな帯刀さんのために何が出来る?
今度こそちゃんと答えられるように頑張らないとね。

「後で我が家に来てくださいね。咲さんが凪さんが来るのを心待ちにしてますから」
「え、咲ちゃんが?私のこと覚えてるの?」
「はい。私もビックリしました」
「どうやら夕凪と馴染み深いごく一部のみが、ちゃんと覚えてるらしい。西郷と梅もしっかりと覚えているよ」

思わぬことを聞かされ驚く私に、更なる驚く現実を教えてくれる。
てっきりここでは帯刀さん達以外の人脈は一からだと覚悟していたのに、そう言うことなら問題はほとんどない?
梅さん、西郷さん、咲ちゃんが覚えてくれるなら、それだけでもう私は十分だ。

「本当ですか?なら一息ついたら、伺います。私咲ちゃんにいっぱい話したいことがあるんです」
「はい。なら私は戻ります。小松さん、凪さん。これからますます宜しくお願いします」
「それはこちらもです。南方先生には公私ともに、いい関係でいたいです」
「ですね」

と言って、二人は笑い合う。
なんだか私の知らないうちに二人はますます仲が良くなっているようで、それがとっても微笑ましく思えてくる。




「奥様、お帰りなさいませ」
「梅さん、ただいま。またお世話になります」

帯刀さんの言う通り梅さんは私を覚えてくれていて、いつも通り私の帰りを嬉しそうに優しく出迎えてくれた。
ちょっと梅さんが江戸に来ていてことに驚いたけれど、きっとこれも帯刀さんの考慮だろう。
私が梅さんと仲がいいって知ってるから。

「はい、きっちりお世話をさせて頂きます。旦那様お荷物をお持ちいたします」
「いいよ。このぐらいどうってことないから。それよりも昼食を作って持ってきてくれる?」
「分かりました。腕を振るって作らせていただきますので、期待して待っていて下さいね」
「うん。ありがとう梅さん」

頼もしく梅さんは言ってくれて、私達は別れ私は帯刀さんの後を着いていく。

梅さんの手料理は、久しぶりだから楽しみだな。




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