夢幻なる絆

□9.白龍の神子の娘
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「帯刀さん、おはようございます」
「おはよう、夕凪。ようやく目が覚めたんだね」

目が覚めると何かをしてる帯刀さんに眠い目を擦りながら挨拶を交わすと、私に気づいた帯刀さんは傍に来てくれそう言い微笑む。

ようやく目が覚めた?
なんか言葉が、おかしくない?

「今は何時ですか?」
「もうすぐお昼」
「!!」

まだ頭がふわふわして首を傾げ問いたものの、予想外過ぎる時間に目が一瞬で覚める。
寝坊するのもどを通り越してる時間帯。

「そんな顔するのなら、もっと早く起きるように心がけることだね」
「はい、そうします。それにしても帯刀さんはこんな所で・・・ハ、ハクシュン」

呆れた様子でもっともな私的をされてしまい反射的に正座で謝り問いかけ中、寒さのあまりくしゃみをしてしまい縮こまる。
私が下着だけって言うのもあるけれど、この部屋はやたらに寒い。

「今は冬なのだから、そんな格好してたら寒いのは当たり前でしょ?・・・どう、暖かくなってきた?」
「はい、すごく暖かいです」

厳しい言葉をバッサリ冷たく切り捨てられたのに、帯刀さんは私を抱きしめ温めてくれる。
暖かくて気持ちがいい、私だけが許される居場所。

「夕凪、本当にお帰り。よく私の元に戻ってきてくれたね」
「だってここだけが私の居場所ですから。例え世界中の誰もが違うって言われても、私はそうだって断言して貫き通します」

改めて言われる今度は感謝付きの台詞に、そう強く断言して微笑み帯刀さんの唇を奪う。
目覚めのキス。

目覚めて一番最初に見るのは、私の愛しい旦那様。
なんか久しぶりで、幸せだな。

「そうだね。私もそうだよ。私の妻は誰がなんと言ったって、私の目の前にいる夕凪ただ一人だけ。それじゃぁそろそろ行くよ」
「え、行くって何処にですか?」
「私と夕凪の江戸での新居。薩摩藩邸で暮らすのもいいけれど、夕凪にはいろいろと居心地悪いでしょ?」

いきなり話を変えられ戸惑う私だったがそれは帯刀さんの優しさでもあり、同時になんで帯刀さんがここにいるのか理解ができる。
言われて辺りを見回せば、ここは私の部屋でも帯刀さんの部屋でもない。

江戸の薩摩藩邸・・・。
風花記通り江戸が舞台。

「そうですね。気遣いありがとうございます」
「気にしなくてもいいよ。ここだとちょっとしたことでもすぐ呼びに来るのだから、気が休まる時がほとんどないんだよ。夕凪がいない時なら構わないのだけれど、これからはそうじゃない。妻との大切な時間を邪魔されたくないからね。これに着替えなさい」

感謝する私に帯刀さんらしい理由を答え、真新しい紅色の着物を渡される。
色鮮やかだけれども、落ち着きがある着物。
一目見ただけで気に入って、ますます笑顔がこぼれ落ちる。

「帯刀さん、ありがとうございます」
「どういたしまして。私が夕凪を思って選んだものだから、似合うのは保証するよ」

言いながら早速袖を通し着替え始めると、帯刀さんは胸を張り自信を持って言ってくれた。
帯刀さんがそこまで言うのなら、間違いないだろう。




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