夢幻なる絆

□9.白龍の神子の娘
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「マリア、さっきから元気ないようだがどうした?せっかくお前の大好きなハンバーグを作ったんだぞ?」
「あうん、美味しい・・・」

楽しいはずの夕食の時間なのに、今日はまったく楽しくない。
理由は未だに祟が私と距離を取って、何も話してくれないから。
私は悲しくて寂しくて、お兄ちゃんの問いかけにも上の空。
美味しいと答えたけれど、本当はそんなに美味しくない。

「おい、祟。お前もなんか変だぞ?一体何があった?」
「マリアちゃんがデリカシーのないことを聞くからいけないんだよ。ボクだって男なんだからね」
「・・・・・」

そんな私を不信に思ったお兄ちゃんは祟にも同じことを問うと、祟はさっきよりも怒っているらしく私を悪く言う。
それはすべて真実だから、私は何も言えなかった。

「デリカシーね。マリアの精神年齢が十歳にも満たない子供だよ。・・・マリア、お兄ちゃんがちゃんと後で教えてやるから」
「渓兄、マリアちゃんにはそんなこと教えなくて良いよ」
「いいや、教える。今後のためにもそれが良いんだ。それとも祟はこう言うことが続いても、絶えられるって自信があるのか?もし俺だったら間違えなく野獣になるよ。マリアはいい女だからな」
「うっ・・・」

頬を膨らませお兄ちゃんの言葉を強く否定する祟だったけれど、それは却下され更にあまり分からないことを言って祟を黙らせる。
祟が、可愛そうに思えた。

お兄ちゃんが野獣になる?
一体なんのことだろうか?
そもそも野獣って何?






楽しくない夕食がようやく終わり私はお兄ちゃんと一緒に自分の部屋に戻り、私とお兄ちゃんはベッドの上にお互いに向かい合って座った。
いつもと同じ優しい眼差しでお兄ちゃんは私を見つめ、手を握り微笑む。

「マリア、祟になんて言って、困らせたんだ?」
「祟が結婚しようって言ったから、夫婦の遊びのことを聞いた。そしたら怒った」
「やっぱりそんなことか。まったく祟は気が早い。なぁマリア、祟はお前の婚約者だが、まだ結婚は早すぎる。もっとお互いに大人になって愛し合うことが出来たら、俺は喜んで結婚を認めてやる」
「うん、分かった」

正直に祟が怒った理由をお兄ちゃんに話すと、お兄ちゃんは苦笑しながらそう教えてくれる。
理解出来ない内容だけれど、お兄ちゃんの言葉は間違えがない。

祟との結婚はお互いに愛し合ってから。
愛を知らない私はまだ早い。

「そう即答する間は、結婚するのは当分先のようだ。夫婦の遊びとは、愛し合っているから出来る物。すべてをさらけ出して、性行為を交わす物なんだ。性行為って言葉は知ってるよな?」
「うん、男女が子孫を残すためにする交尾のことで、やり方は女性の膣へ」
「ストッ〜プ。それ以上口にしたらいけません。前にも言ったがそれはすごく恥ずかしいことなんだよ」
「?」

ここでようやく知った意味と一緒に問われたから私の知る限りのことを答えていると、お兄ちゃんは慌てて私の口を塞ぎそう警告する。
そう言えば前にも同じことを言っていた。

裸を他人に見られるのも恥ずかしいことだと教えられたけれど、私は別に恥ずかしくないからよく分からない。
幼き頃から全裸になって良く検査されていたから、それが当たり前だと思っていた。
なのに多くの人は恥ずかしいらしい。
私には恥ずかしいと言うことそのものが、よく分からない。

「って言ってもマリアには、まだ分からないか。とにかく祟にはそう言う話をしたらいけない」
「それはもう分かっている。祟は私のこと嫌いになった?」
「大好きだよ。きっと明日になれば元通りになるから、そんなに心配するなって」

ってお兄ちゃんは言って、私の頭をクチャクチャになぜ抱きしめてくれた。
お兄ちゃんが抱きしめてくれると、どんな心配でも安心出来る。




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