夢幻なる絆

□9.白龍の神子の娘
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「マリアちゃん、着いたよ」
「高いから、一望できる」

砂漠の中を歩くことしばらくして高い建物に上りきり屋上に出ると、そこには夕日が沈みかけ砂漠が広がっていた。

遠くの方の時空の歪みはオーロラに似ていて、私はこう言う景色は嫌いではない。
後は私達が住んでいる建物の他に数件の建物と、巨大な邪悪な気を流した化物も見える。
これが私達が望んでいる合わせ世の原型なんだろうか?

「マリアちゃん、あれがボク達の希望の光だよ」
「え、あれが?」

と祟は化物を指差し、嬉しそうに教えてくれた。

とてもそうには思えなかったけれど、それは私には理解できないことなのかも知れない。
祟が傷付かなければ、私はそれでいい。

「うん、あいつがお姉ちゃん達を倒してくれる。倒してくれなくても、渓兄の時間稼ぎぐらいはなるよ。そしたら合わせ世が誕生する。ボクが望んでいたより、ずっーと素晴らしい世界」
「そうか。祟は、楽しみ?」

いきいきと目を輝かせて、これから未来を話している祟。
私の違和感はすぐになくなって、希望の光だと思うことにした。
私達を救ってくれ、この幸せを永遠にしてくれる物。

「ねぇ、マリアちゃん。左手を出して」
「うん、いいよ」

私の答えには答えてはくれず話題も変えられてしまい、ちょっと悲しい思いをしながらも言われた通り左手を差し出す。
すると祟はポケットからビーズの可愛い花がある指輪を出し、私の左手の薬指にはめてくれる。

これはなんの意味があるのだろうか?
そう言えば凪と帯刀の左手薬指にも、指輪がはめられていた。

「すべてが終わったら、ボク達結婚しよう」
「結婚?それって私と祟が夫婦になること?」
「そうだよ。この指輪は約束の証。マリアちゃんを想って、一生懸命に作ったんだ」
「ありがとう。なら私も祟を想って、指輪を作る。作り方は本に載ってる?」

結婚することは前から言っていたことだったから特に違和感はなく、指輪がそう言うものであれば私も祟に上げなければならない。
結婚とは好きな血が繋がってない異性がして、ずっーと一緒に仲良く暮らしていくことらしい。
祟と私はもう一緒に仲良く暮らしていると思うけれど、祟が望むのなら私は叶える。

そしたら私と祟も凪と帯刀のように、夫婦の遊びをやるんだろうか?
祟もそれが好き?

「本当に?嬉しいよ。・・・マリアちゃんどうしたの?」
「祟は夫婦の遊びは好き?」
「え?」
「帯刀が男はみんな夫婦の遊びが好きって言ってたから」
「マリアちゃん、夫婦の遊びって、なんだか知ってるの?」

疑問となって気になり聞いてみると、祟の顔は一気に真っ赤に染まり動揺した。
瞳孔が大きく開いて、脈が早くなっていく。
それはあの時の凪と同じだった。

「ううん、知らない。でもなんか嬉しい悲鳴をあげてたよ。何して遊ぶ?」
「だっ駄目。マリアちゃんには、絶対に教えてあげない。・・・何考えてるんだよあいつら・・・」
「・・・ごめんなさい」

あんまり私がしつこいのが原因なのか、祟は大声をあげて怒る。

私のせいで祟は嫌な思いをして、怒らせてしまった。
そんなつもりじゃなくって、どう言う遊びなのかを知りたかっただけ。
そしてそれで祟と遊びたかった。

「もう帰ろう?渓兄が夕食を作って待ってるから」
「・・・うん。もう言わないから、私のことを嫌いにならないで」

私と視線を合わせないまま突然そんな話を切り出され、私は不安になり必死にそうお願いする。

祟にだけは、嫌われたくない。

でも祟は何も答えてはくれず、でも私の手は繋いだまま無言で歩きだす。




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