夢幻なる絆

□9.白龍の神子の娘
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凪は優しくて面白いお姉さんのような人。
帯刀は厳しいけれどやっぱり優しくて、凪を本当に大切にしていることがわかる。
私はそんな二人が、お兄ちゃんと祟の次に好きだ。
それから仁と咲もこの異世界の人達は、みんな私に優しくしてくれた。
元の世界の大人達とは大違い。
だからお兄ちゃんの言うようにあんな世界なんてなくなって、祟が望む私達が笑って安全に暮らせる合わせ世になればいいと思う。
そしたらこの異世界もなくなるかも知れないけれど凪達がお兄ちゃんと祟に協力してくれたら、この異世界の滅びの時を遅らせるって言っていた。
お兄ちゃんは絶対に嘘をつかないから、私はその言葉を信じている。



「旦那様、奥様。マリアさんの兄と名乗る人がいらっしゃいました」
「え、お兄ちゃん?」

昼食後梅さんの知らせが嬉しくて、私はすぐに立ち上がりコロを抱き上げ玄関に急ぐ。
ようやくお兄ちゃんが迎えに来てくれたから、元の世界に戻れて久しぶりに祟に会える。
私は三人と一匹一緒でいることが一番好き。



「お兄ちゃん」
「マリア、迎えに来たよ。元気だったか?」
「うん」
「ワンワン」
「コロも元気そうだな」

玄関先のお兄ちゃんの元に行くと、お兄ちゃんは笑顔でいつものように私を抱き上げ頬にキスをしてくれる。
コロも嬉しそうにしっぽをふって、お兄ちゃんに寄り添い甘えだす。

「マリアちゃんのお兄さんって、すごいイケメン・・・。まさに美形兄妹だ」
「君がマリアくんの兄上だね?」

後から凪と帯刀がやってくると、凪は目を大きくあけお兄ちゃんに見とれ、帯刀はそんな凪が気に食わないのか少しだけ機嫌が悪くなりながらもそう問う。

それは嫉妬と言うものだと、以前祟が教えてくれた。
好きな相手が自分じゃない異性に好意みたいなものを抱いたり、仲良くしたりすると嫌な気持ちになるらしい。
私は祟が笑っていてくれたら私も嬉しいから、それは良くわからない感情だ。

「はい。藤原堪渓と言います。渓と呼んで下さい。妹がお世話になりました」
「気にしなくてもいいよ。妻が無理矢理マリアくんを、我が家に引き止めたようなものだからね」
「うん、そうなんだ。それにマリアちゃんはとってもいい子だったよ」
「それを聞いて安心しました。本当にありがとうございます」

とお兄ちゃんはちゃんと二人にお礼を言うと、二人は嫌な顔をせずそう言ってくれる。
私のことを嫌がってないと思うから、私もほっとして肩をなで下ろす。

私はなんとなく人の感情が読み取れ、私を嫌っている人達はすぐに分かるから。
前の世界でずっーといた大人達は私のことを、ただの使える道具だとしなか思っていなかった。
私もそんな大人達は、好きではない。

「マリアちゃん、これからは遠慮なく泊まりに来てね」
「そうだね。いつでも預かりますから、仕事で留守にする時は言ってください」
「はい、分かりました。それでは我々はもう帰ります」
「今まで親切にしてくれて、ありがとう。また来る」
「うん、バイバイ」

最後に挨拶とそんな約束を交わして、私達は二人の家を後にする。




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