夢幻なる絆

□9.白龍の神子の娘
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「サトウくん、いらっしゃい」
「小松さん、お邪魔しています。・・・凪さん?」
「凪、どうかした?目の周りが真っ赤」

梅さんの配慮でアーネストとそれからマリアちゃんも客間に移動してもらい、どうにか落ち着いた私は帯刀さんの背後に隠れ客間に入る。
案の定二人に不思議がられ、特にマリアちゃんからは聞かれて欲しくないことを問われてしまう。
普通の人なら疑問に思ってもその場の空気を読んで聞かないことでも、アリアちゃんはそう言うことが苦手で疑問に思ったことはすぐ聞く子だった。
マリアちゃんは本当に私を心配してくれている。

「マリアくん、心配は無用だよ。自分が無自覚でしてしまった失態に気づき、心の底から反省しただけだから」
「反省すると、目が赤くなるの?」
「そう。でも夫である私がちゃんと傍で支えたから、もう大丈夫だよ」
「そうなんだ。よく分からないけれど、良かったね凪」

また帯刀さんは微妙な答えをマリアちゃんにそれらしく教え、純粋なマリアちゃんを納得させてしまった。
ただ夫の部分をやたら強調してしかもアーネストをちらり見たのは、私の気のせいなんだろうか?

・・・気のせいだよね?
だってそうする理由がまったくない。

「そうだね。心配してくれてありがとう」
「うん」
「小松さんは本当に独占力が強いんですね。もっと凪さんを信じてあげたらどうですか?」
「私の妻は単純だから、騙されやすいからね。信じたくても信じられないよ」

ようやくマリアちゃんが納得してくれてホッとしたと思えば、今度はアーネストがトゲのある言い方で帯刀さんにつっつかかり裏がある黒い会話が始まる。

原因はすべて優柔不断の私にあるんだけれど、今の所帯刀さんの愛情が重いって思ったことはない。
だから私は別に良いと思っているし、本当は帯刀さん私を信じてくれてる自信がある。
でもアーネストは私を思ってくれて、親切心から言ってくれている・・・だよね?

「あの〜私のことで言い合いするのは止めてください。私もっとしっかりしますから」
「そんなこと、出来るの?」
「一体どの口が言ってるんでしょうね?」
「う・・・、努力します」

どうにかこの場を穏便に納めて楽しい会話にしたくて、そう言って口を挟むのだが墓穴を掘るだけだった。
しかもこう言う時だけ二人は息がぴったりで、お馬鹿な私には勝ち目がない。
どうせ優柔不断でおちょこちょいの私が、どうやったてしっかりなんて出来ませんよ。
んなこと出来たら、とっくにしっかりしていました。
せめてこれからは先のことも、少しは考えられるようになりたい。

「帯刀とアーネストは仲がいいんだね?」
「マリアちゃんもそう思う?」
「うん。凪も仲良くすればいいよ」
「・・・・・・」

そんな二人を見てマリアちゃんは現状を悟るものの、明らかに何かが違いそう言われてしまう。
マリアちゃんは本当にこの二人が、仲が良いと思っている。

確かにそれなりに仲は良いと思うけれど、この場合はどう考えても違うだろう?
そしてこんな二人とは、絶対に仲良くしたくない。




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