夢幻なる絆

□9.白龍の神子の娘
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「凪さん、お帰りなさい。元気そうで何よりです」
「アーネスト、いらっしゃい。帯刀さんから聞いてるよ。薩摩藩の仕事を手伝ってくれてるんだってね。ありがとう」
「いえいえ、凪さんにお礼を言われるほどではありません。仕事ですからね」

よほど忙しいのかなかなか顔を見せてくれなかったアーネストがようやく我が家に訪れて、妻として一応お礼を言う私にアーネストは笑顔でそう返す。

確かにそうかも知れないけれど、帯刀さんを手伝ってくれてるのは変わらない。
だからありがとう。

「凪、お客さん?」
「うん、私と帯刀さんの友人のアーネスト。アーネスト。この子はマリアちゃんとコロ」
「こんにちは」
「ワンワン」

そこへ用事をすませただろうマリアちゃんがやって来て問われるから、私は一気にお互いをお互いに紹介する。
マリアちゃんと暮らすようになって、段々微かな表情の変化がわかるようになった。
とにかく可愛い少女。

「こんにちは。あなたのことは小松さんから、いろいろ聞いてます。聞かされてた以上に、可愛らしい人ですね。特にその髪型よくお似合いですよ」
「ありがとう。凪のオススメだって」

どんな風に紹介したのか気になりつつも嫉妬しそうだから口を挟まず聞いていると、ナイスな誉め言葉にマリアちゃんはそう答え私に視線を向ける。

美少女のツインテールは、三割増しです。
もちろんこめかみより上で結わく限定であり、耳から下で結わくのは私に言わせれば邪道。

「凪さんいくらあなた自身が似合わないからって、彼女に願望を押し付けるのはよくありませんよ」
「別に押し付けてないもん。頼んだらいいよって言われたからしただけ」

相変わらずの皮肉に強く反論し、マリアちゃんを抱き締める。
そりゃぁ私がツインテールしたってきしょいだけだけれど、何も面と向かってはっきり言う必要は絶対にない。

しかも押し付けって、一体アーネストは私をどんな目で見てるの?
まさか未だにどら猫?
雪ちゃんの予想は、絶対にありえない。

「うん。髪が邪魔だったから、ちょうど良かった」

そうマリアちゃんは私を味方してくれるように、強く頷いていかにもらしいことを言ってくれる。
気を使わないマリアちゃんだから、これは本心だと思う。

「マリアは優しい子ですね。そんなマリアにこれはプレゼントです」
「ありがとう。開けてもいい?」
「はい、どうぞ」

マリアちゃんの好感度はアーネストにも絶大でそう言いながら、色とりどりの飴が入った綺麗な硝子瓶をマリアちゃんに渡す。
羨ましくてついつい硝子瓶に目を取られてしまう愚かな私を、アーネストは見逃すはずもなくニヤリと不気味に笑う。

「凪さん、大人げないですよ。そんなに欲しいですか?」
「なっ?そんなわけ・・・」
「安心して下さい。凪さんにもちゃんと用意してますよ。はい、チョコレートの詰め合わせ」
「・・・ありがとう」

ここぞとばかりに馬鹿にされたら意地でも受け取らないのが普通なんだろうけれど、私は普通じゃないからあっさり誘惑に負けてしまい受け取ってしまった。

チョコレートは大好きなんだから、こればっかりは仕方がない。




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