夢幻なる絆

□9.白龍の神子の娘
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「マリアちゃん、どうしたの?」
「もう寝るからお休みなさいって言いに来た」
「ワンワン」

思いっきり動揺し声を裏返らせ反応すれば、マリアちゃんはマイペースに来た理由を答える。
私達がしていたことなど、まったく気にしてないらしい。
よかったような。悪かったような。

「そう。でもこれからは他人の部屋に入る時は、確認して許可をもらってから入ること」
「分かった。おやすみなさい」

この突然の訪問には帯刀さんもそれなりに驚いたのか、頬を赤らめマリアちゃんに優しくそう忠告する。
これが男性なら間違いなく、雷が落ちていただろう。
するとマリアちゃんは素直にうなずき、私達の元にやって来てお休みの挨拶をする。
その姿が、可愛かった。

「はい。おやすみ」
「おやすみ、マリアちゃん、コロ」

私達もマリアちゃんに合わせて挨拶をし返すのだけれど、マリアちゃんはすぐには戻らずじっーと私達を見つめだす。

他に何か言いたいことがあるのだろうか?

「どうしたの?怒ったりしないから言いなさい」
「明日から私も一緒に食事していい?一人は淋しい」
「そうだよね。なら一緒に食べよう!いいですよね?帯刀さん」

マリアちゃんの言い分はもっともなことでつい独断で決めてしまい、帯刀さんに駄目だと言えない承諾を求めてしまう。

私もマリアちゃんと同じで一人の食事はあんまり好きじゃないから、その気持ちはよく分かっているつもりである。
それに食事はみんなでワイワイしながら食べた方が同じ物でも、何十倍もおいしいんだよね?
特に愛する人と二人だけ食べる食事は格別。

・・・あれ?

「夕凪がそれで良ければ、私は別に構わないよ」
「凪、帯刀ありがとう。コロ、良かったね?」
「ワンワン」

フッと自分の言葉に矛盾が生じていることに気づき考え直そうとする前に帯刀さんはトゲのある言い方で承諾し、マリアちゃんは無表情ながらも喜んでいるようで自分が寝ている部屋に戻って行く。
足取りも軽く嬉しそう。

ただ・・・

「夕凪は、本当に馬鹿だね。それはどう言う意味か分かって言ったの?」
「感情が赴くままに言いました。今気づきました。どうしましょう?」

途端に機嫌の悪くなった帯刀さんは私を貶しそしてイタイ所を問われてしまい、渋々正直に答え無駄だと思いながらも助けを求める。

私は帯刀さんと二人で食事するのが一番好きなのに、何自らなくすようなことを言っちゃったんだろうか?
マリアちゃんはしばらくうちにいるんだから、必然的に二人っきりの食事はお預けになる。
私ってば本当に馬鹿だ。
でも今さら一人で食べてなど、可愛そうで言えない。

「こればっかりは助けられないよ。お仕置き」
「え、ここんな所で??」
「そう。私もたまには感情が赴くままに、愛する妻を味わいたい」

悲しいことに速攻却下されそう言いながら、私を押し倒し首筋をしゃぶるようにキスを何度も繰り返す。
それは夫婦の時間の、始まりの合図でもあった。

たまには感情が赴くままに、愛する妻を味わいたい。

でもいくらここでお仕置きって言われても、こんなの全然お仕置きにならないと思う。




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