夢幻なる絆

□9.白龍の神子の娘
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「マリアちゃん、調子はどう?」
「大分いい。私を助けてくれてありがとう」

マリアちゃんの様子が気になり帯刀さんのお土産を持って顔を出すと、食事を綺麗に食べ終えコロと遊んでいた。
顔色も大分良くなっていてホッとしていると、私に気づき改めてお礼を言われる。
お礼されると照れるけれど、よく考えたら私は何もしていない。

だからお門違い?

「私は何もしてないよ。マリアちゃんを助けてくれたのは、咲ちゃんに南方先生。後チナミちゃんだからね」
「そうなの?ならお礼を言いたい」
「そうだね。咲ちゃんと南方先生なら、明日診察にくるからその時言えばいいよ。チナミちゃんは今度合わせてあげる」
「うん、分かった」

マリアちゃんは素直すぎて、とにかく良い子である。
さっきは素直すぎて多少戸惑ったけれど、四神達におおよその事情を聞いて納得した。

マリアちゃんのお母さんは、現代では元組織の人間。
殺人鬼と呼ばれていて感情もなかったらしい。
でも夫となる人と出会いさまざまな障害を乗り越え神子としての役目を終え結婚し幸せに暮らしていたんだけれど、数年後長男と末娘が神隠しにあったらしく行方不明。
だからもしもマリアちゃんがその時現代にやってきて組織に拾われ育てられたとしたら、かっての母親と同じ感情のない殺人鬼なのかもしれない。
そう思うと少し怖いけれど、それ以上に可愛そうだとも思う。
母親と同じ運命を歩むことに・・・だったらチナミちゃんがマリアちゃんを救ってくれる?
でもチナミちゃんはマリアちゃんのこと・・・。

「マリアちゃんは、好きな人いるの?」
「うん。私の好きな人はお兄ちゃんと祟。祟は私のフィアンセ」
「!!」

なんとなくそう訪ねると、無邪気で大胆な答えが返ってくる。
私は驚き過ぎて言葉を失う。
どう高く見ても女子高校生に見えるマリアちゃんに、フィアンセがいるなんて思いもしなかった。
この時代ならありえる話かも知れないけれど、マリアちゃんはあっちの世界の人間。
それとも組織が決めた縁談?

「私なんか変なこと言った?」
「ううん、言ってないよ。祟くんってどんな子?」
「祟は私の初めて出来た大切な友達で、いろんなことを教えてくれて一緒にいて楽しい気持ちになる。だから祟にはいつでも笑顔でいて欲しい」

無表情ながらも彼の話をしているマリアちゃんは幸せそうに見えて、本当に彼のことが大好きなんだなと言うことがよくわかる。

私なんかが心配しなくても、マリアちゃんは殺人鬼じゃない。
ごく普通の恋する乙女。
ただ祟って名前がすごく気になるんだよね。
もし私の知ってる桐生祟くんだったら、マリアちゃんは騙されてないだろうか?
まさか白龍の神子の素質があるから、純粋なマリアちゃんを利用するとか?
だって合わせ世は祟くんと瞬しか生きられないでしょう。
それとも祟くんもマリアちゃんが好きで、ゲームとは違って序盤からゆき達と和解する?
それならその方がいいんだけれど・・・。

「ねぇマリアちゃん、今度祟くんに会わせてくれる?」
「うん、いいよ。お兄ちゃんと祟も会いたいって言ってた」
「え?」

どっちにしろ確かめるには直接会うのが一番なのでお願いしてみると、これまた意外な言葉が返ってきて私を惑わす。
二人はどうして、私を知っている?




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