夢幻なる絆

□9.白龍の神子の娘
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「美味しいよ。やっばり妻の愛情たっぷりの手料理はどんな高級料理よりも勝る」
「ありがとうございます。そう言ってもらえると嬉しいです」

ステーキを一口食べて柔らかな笑みを浮かべ誉め言葉をくれる帯刀さんに、私は嬉しくて笑顔でお礼を言って頭を下げる。

美味しいよ。

なかなか言ってもらえないから、こうして言われると嬉しさ倍増。
珍しく三枚目で上手く焼けたんだよね。
一枚目は半分以上焦がして二枚目は少し焦がし、無事なとこだけ切って私と四神達とで食べている。
本当は四神達にも上手く焼けたのを食べてもらいたかったんだけど、特にシュウちゃんが食べ物を粗末にしたらいけませんと怒った口調で注意するからこうなった。
確かに食べ物は粗末にしたらいけない。
それなのに私は失敗ばかりして、その度に破棄してる。
そろそろ失敗の頻度をゼロに近づけたい。

「今度は野菜の切り方を頑張りなさい」
「え、あっ?・・・頑張ります」

思っている側から指摘されなんだと思えば、輪切りにしたはずのキュウリが繋がっている。
あまりの馬鹿らしい失態に、シュンと小さくなり反省するしかなかった。

私って本当に何をやらしても、全部が中途半端でダメダメだな。

「そんなに落ち込まなくても、私は夕凪に完璧を求めたりしないから安心しなさい」
「うっ・・・それ逆に凹むんですけれども。私ならできるって励まして欲しかった」
「そう?だったら夕凪なら出来るよ」
「・・・・・」

多分私を思って言ってくれてると思うんだけれども冷たい言い方に聞こえてしまい、図星だけれど苦し紛れに催促すると返ってきたのは感情がない棒読み声援。
言われて催促したことを思いっきり後悔しただけではなく、更に凹み自分の愚かさを悔やみ泣きたくなった。

帯刀さんの言う通り私になんかに、完璧を求めたらいけないかも知れない。
完璧を求めてもきっと私はどっかで失敗するって言うなくていい自信がある。
それが小松夕凪なのだ。

「どうやら自分と言う物がよく分かったみたいだね。ならこの話は終わりにして、大切な話をしよう」
「・・・・・。大切な話ですか?」

最後の最後まで厳しいお言葉をいただき、話は切り替わり私も気持ちを切り替える。
切り替えるしかなかった。

「そう。南方先生からは安道那津が皇女和の宮様に献上するってことはもう聞いているね?」
「はい、聞いてます」
「今度和の宮様はお忍びで芝居を見物される際、その時に献上予定になっている。夕凪は私と一緒に、和の宮様の同行をするよ」
「・・・はぁ?」
「いくらお忍びであっても、今の時期何があるか分からないからね。光栄なことに将軍家直々に、薩摩が護衛をすることを頼まれてね。夕凪が私の奥方だと公表するのには、絶好の機会でしょう?」

途中までは私にも話が理解出来ていたはずがあるとんでもない言葉がきっかけで、頭の中が真っ白になり何を言っているのかまったく分からなくなってしまう。
ただとんでもないことを帯刀さんは言っているのは分かるんだけれど、それ以上は分かりたくもなかった。
私は凡人以下で完璧が出来ない人間だってたった今自覚したばかりなのに、それを理解したら呆れかに矛盾であり身の破滅をするだろう。




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