夢幻なる絆

□9.白龍の神子の娘
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「ワンワン」
「コロ、どこ行ってたの?」
「ワンワン」
「コロは、ここがどこだか知っている?」

子犬が一足先に少女がいる部屋に入っていくと、少女だろう可愛い声が聞こえる。
どうやら子犬はこのことを、私に知らせたかったらしい。

それにしても子犬は、コロって名前なのか。
私が小さい時から大切にしているぬいぐるみと同じ名前だ。
可愛くってコロコロしてるもんね。

「ここは私の屋敷ですよ。私の妻が怪我をして気を失っている君を人に頼んで、我が家に連れてきたんです。医師に手当てをさせてますが、体調はいかがでしょうか?」

コロに対しての問いにも関わらず、帯刀さんはそう丁寧に答えながら中へと入っていく。
私も続けとばかりに中入り帯刀さんの背後から少女を見ると、まるでフランス人形のような愛らしさがある。

ただ少しだけ表情が固いと言うか乏しいような気がするんだけれど、それはここが知らない場所だから戸惑いがあるだけなんだろうか?
確かに目が覚めたら知らない場所だったら、誰だって驚いて表情がおかしくなるか。

「大丈夫。親切にしてくれて、ありがとう」
「気にしなくてもいいんです。妻が好きでしたことなんですから。私の名は小松帯刀で、妻の名は夕凪と言います」
「凪って呼んでね。宜しく」
「私はマリアで、この子はコロ」
「ワンワン」

私が言うのもあれだけれど少女は年の割りには幼い受け答えで、でも表情はあまり変わらない不思議な子だった。
なんだか総司くんに、ちょっと似ている。

「マリアちゃんか。可愛い名前だね。家はどこなの?」
「家はここにはない」
「ならご家族は?」
「お兄ちゃんとコロとそれから祟」

薄々答えがわかっていたものの家のことを尋ねればやっぱりの答えで、家族についてはかすかに表情を明るくさせそう返答する。

それだけマリアちゃんにとって家族は、かけがえのない人た・・・え、両親がいない?

「兄上はどこにいるのですか?」
「一段落ついたら迎えに来るって言って、これで宿に泊まってなさいって言われている」

とマリアちゃんは帯刀さんの問いに素直に答え、お財布らしきものを私達に見せる。

見た目からして結構入っていて、無駄遣いをしなければしばらく泊まらそう。
でも私が思っていたのとは、なんだか少し違う。

てっきりマリアちゃんはゆき達と同じ現代人だからここには家も家族もないと思ったのに、お兄さんがマリアちゃんにお金を預けてしかも迎えに来るって一体どう言うこと?
それともお兄さんと言うのは、お世話になっている人のことだろうか?
それに祟って・・・?

「そう。なら兄上が来るまで、我が家にいなさい。夕凪、これでいいんでしょ?」
「はい、ありがとうございます」

やっぱりいつもと違って物わかりの良い帯刀さんは私が言わなくても自らそう言ってくれ、お願いする手間が省けたことを喜び二つ返事で頷いて見た物の違うことで不安が残る。

いつもと違うのは相手が女性だからと言うのがあるとは思うんだけれども、それだけではない優しさが合って不安はそこから来ているんだと思う。
つまりこれは嫉妬に近いかも知れない。

「これから、お世話になります」

マリアちゃんは遠慮も躊躇いもなく、頭を下げそうお願いするのだった。




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