夢幻なる絆

□9.白龍の神子の娘
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「それで夕凪。梅から聞いたけれど、また厄介事を持ってきたみたいだね?どうして夕凪はいつもそうなの?」
「厄介事って・・・私はただ倒れていた少女をチナミちゃんに頼んで、我が家に連れて来てもらっただけです」

こう言う話の切り替えはすこぶる早い帯刀さんは突然ため息交じりで呆れた言い方で問い、呆気に取られながらも私はそうじゃないことを懸命に訴えて正当化させる答えを言う。
頻繁に起きる日常。

そりゃぁ実はちょっと事情がある少女かも知れないけれど、私は人命救助をしたんだからそう言われる筋合いはない。
言うんだったらすべて事情を聞いてから、厄介事だと判断してもらいたいもん。

・・・確実に言われそうだけれど。

「まったく・・・。チナミ、ありがとう。妻が迷惑を掛けたね」
「まぁ・・・弱冠・・・。ではオレはそろそろ帰ります」
「待ちなさい。チナミには聞きたいことがある」

相変わらず腰が低いチナミちゃんで用件がすんだと思い帰ろうとするが、帯刀さんに呼び止められ再び腰をおろす。

帯刀さんがチナミちゃんに聞きたいことは分かってる。
私もその疑問は分かってない。
まぁ真相が分かる人はいないと思うけれど。

「チナミはどうして夕凪を知ってるの?」
「は、おっしゃている意味が分かりかねませんが・・・」
「ならチナミは夕凪を好んでる?」
『はぁ?』

爆弾発言以外の何物でもないことを悪魔の笑み付きで問う帯刀さんに、チナミちゃんだけでなく私までもが驚き帯刀さんをガン見してしまう。

よりにもよってチナミちゃんに、なんてことを言いだすんだろうか?
チナミちゃんは私を疎ましいと思ってることは、帯刀さんにだってよくわかっているはず。
それなのにチナミちゃんにまで嫉妬する?

「それともまさか夕凪を姉のように、慕っているなんて言わないよね?」
「言いません。なんでオレがこんな奴を好んだり、慕ったりしないといけないのですか?こんな奴を好むのは、よほどの物好きしか・・・あっ」

追い込まれるだけ追い込まれたチナミちゃんは顔を真っ赤に染まらせ激怒するけれど、帯刀さんの地雷を思いっきり踏み我に戻り口を押さえるがすでに遅し。
瞬間とんでもない邪気を漂わせて、明らかに目が笑っていない笑みを浮かばせる。
確かに帯刀さんは私のような女性を愛してくれる物好きだけれど、他人に言われるのは腹ただしくこうなると大魔王より恐ろしい。

「そうだよ。単純馬鹿で花より団子の色気も何もない妻にぞっこんしている私は変態物好きだからね」
「・・・帯刀さん」

機嫌を損ない怒るのは人間だからよく分かるのでけれど、なぜかその時は私を貶すだけ貶す言い方をしてくる。
それは真実なだけに言い返せず、泣いて愚かな自分を哀れむしかなかった。
いくらそれでもぞっこんだと言われても、何一つ嬉しくない。
まさか自分の妻をそこまで言うとは思っていなかったらしいチナミちゃんは、完全に引いてしまい顔も引きつり恐怖も感じる。

「あの小松殿。いくらなんでもそこまで言ったら、小松が可愛そうだと思いますが・・・」
「可愛そうじゃないよ。後で思いっきり甘やかすだけ甘やかすから」
「・・・いやそれでも十分可愛そうですよ私」
「私のやり方に、異論でもあるの?」
「いいえ、別に・・・」

悲しいことに私の訴えは却下されこの件は終わり、チナミちゃんは一応外見上は無事に解放された。

結局どうしてチナミちゃんが私を知っているのか分からないままだったけれど、ひょっとしたらもっと私のことを知っている人がいるかも知れない。



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