夢幻なる絆

□9.白龍の神子の娘
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「しばらくしたら目を覚ますと思います。二三日安静にさせて、十分な栄養を取れば元気になると思います」
「凪様良かったですね。わんちゃんも治療が終わりましたよ」
「ワンワン」
「二人共ありがとう」

我が家に付き梅さんに頼んで客間に布団をひいてもらい少女を寝かし、朔ちゃんに呼んできてもらった南方先生に治療をしてもらった。
怪我は見た目よりもたいしたことがなかったようで手術はなく、さほど時間は掛からずあっさり終わり子犬の治療もすぐに終わりホッと一安心。
咲ちゃんから子犬を受け取ると、嬉しそうにしっぽを振り回し顔中を舐めまくる。
人なっこくて、お利口さんだ。

私も帯刀さんに頼んで柴犬を飼ってもら・・・駄目だ。
いくらなんでもこれ以上、増えたら怒られる。
ただでさえもしこの少女の行き場がなかったら、住まわせてと土下座でも妻の必殺技でもなんでもして頼み込もうとしてるのに。

「では私達はこれで失礼します。何かあればすぐに知らせに来て下さい」
「はい、分かりました。後のことは私に任せて下さい」
「ワンワン」

多忙だろう南方先生はそう言って席を立ち咲ちゃんも一緒に帰ろうとしている所、私は笑顔で胸を張ってそう告げた。
そのぐらいなら私にも出来る。
私だって役に立ちたい。
すると子犬も嬉しそうにまた鳴く。


そして南方先生と咲ちゃんを玄関まで送った後、今度はチナミちゃんを待たせている広間に行く。






「チナミちゃん、今日は本当にありがとうね。少女は時期に目を覚ますって、南方先生が言ってた」
「そうか。あの先生は名医と江戸では有名なお方らしいから、それは間違えないだろう。・・・それにしてもお前って奴は本当に変わってる。身分が高いのにまったくと言って良いほど気にしない上に、異人を同等に扱い偏見を持たないと来てる」
「言われてみればそうだね。でも私にしては全部当たり前なことだから」

今度はさっきのような低レベルな喧嘩にならないように控えめに話を切り出すと、チナミちゃんもなんだかんだと言って心配だったらしく私と同じ反応をする。
そんなチナミちゃんの姿を見ていたら、なんだかとっても嬉しくなり微笑み答えを返す。根は素直で優しい少年だからね。

「小松殿は大変だな。しかしもう少し武人の妻らしく・・・」
「チナミ、余計なことを言わないでくれる?私は今の妻のままで十分満足してるのだから、下手に武人の妻にならなくても良い」
「あ帯刀さん、お帰りなさい」

これで穏便に話は終わると思いきや姑のような小言が始まりかけた時、襖が開きご帰宅の帯刀さんによって回避される。
それにしても少し会話を聞かれてたみたいだけれどグッドタイミングな登場で、そう言ってくれてすごく嬉しくて幸せな気分になれた。
チナミちゃんの暴言など、笑顔で許せるぐらい。

「小松殿?本当に今の小松でよろしいのですか?」
「ああ、問題はないよ。ただいま夕凪」
「!!」

しかしチナミちゃんは珍しく驚きながら帯刀さんに聞き直し確認するのだが、帯刀さんは当たり前のように頷き私を抱き寄せいつものおかえりのキスをくれる。
チナミちゃんの前で堂々と。

真っ赤に顔を染め、動きが止まるチナミちゃん。
私も頬を赤く染まり、視線を下に向ける。
卑怯すぎる禁じ手だ。




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