夢幻なる絆

□8.闘いの仕方
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「明日ははいよいよ台場ですね」
「そうだね。台場ではどんなことになっているか分からないから、絶対に私から離れてはいけない。分かってる?」
「ちゃんと分かってますよ。でもラスボス退治に行くんじゃないんですから、そんな心配しなくて大丈夫ですって」

まるでラスボス退治しに行くように親身になって私を強く抱きしめ心配する帯刀さんに、ご気楽すぎる私はそう言ってニッと笑い帯刀さんにすべて身を任せる。
移動中は当たり前だけれど甘える時間が極端に少なく、思いっきり甘えられるのは二人きりになれる夜だけ。
だから私はいつもより甘えてはいるのだけれど、ちゃんと分かってもらえているのだろうか?

「心配するのは当然でしょ?夕凪はいつもありえないことをやらかして、私を困らせ心配させる」
「そ、そうでしたね。すみません」
「私の傍でなら構わないよ」

帯刀さんも今夜はいつも以上に優しくて、私を甘やかすだけ甘やかす。
昼間では絶対にそんなこと言わず、げんこつを喰らうだけ。
いつも怒られてばかりだけれど、どんなに怒られても夜はすべてを許してくれて優しくしてくれた。
だから私はいつも同じことを繰返して、学ぶことが出来ないんだろう。

結局の所、帯刀さんが私を駄目にしているんだよね?

「・・・明日が無事に終わったら、京には戻らずしばらく薩摩に行こう。二人だけで霧島温泉でゆっくりしよう。約束通り私の産まれた場所にも連れてって、いろんな話をしてあげる」
「本当ですか?嬉しいです。ちゃんと私との約束を覚えててくれたのですね」

いつも帯刀さんはサプライズで私を喜ばさせてくれて、どんな約束でも必ず守ってくれる。
だから私も出来るだけ、約束は守りたい。

「覚えてるよ。それじゃぁ明日も早いから、そろそろ休もう。それとも私が欲しい?」
「そんな誘惑しないで下さい。・・・駕籠で寝ちゃったら、藩士達に迷惑を掛けてしまいます。・・・明日の夜まで我慢します」
「そうだったね。それじゃぁ明日の夜なら良いんだね?」
「え、まぁ明日の夜なら・・・好きなだけしても良いですよ」
「好きなだけね。覚えておくよ」

流れ的につい淫らな発言を言ってしまうと、帯刀さんは満足そうに笑い私の頬を舐める。
それだけでも敏感に感じてしまう私の体は、もう少しで漏らしそうになり欲情が爆発し掛けた。
そんなことを帯刀さんに知られれば、確実に流されてしまうかも知れない。

「夕凪、隠しても私が欲しいと顔に書いてあるよ。そんな顔されたら私も夕凪が欲しくなるでしょ?」
「すみません。今夜は手を繋いで寝ませんか?私小さい時はお父さんに手を繋いでもらわないと寝れなかったんですよ。抱いてもらうのが苦手だったから・・・」

明らかに言わせたいと分かりつつわざと知らんぷりして謝るだけ謝り、そう言って帯刀さんの手を握り幼い頃の話をしながら笑う。
多分これも誘惑なんだろう。

「苦手ね。私に抱かれるのは好きな癖によく言う」
「帯刀さんは特別なんです」
「確かに。私も夕凪だから許せることがあるからね。なら今夜はこうして寝よう」
「はい」

意外な納得した答えにちょっと嬉しくなって私は元気よく返事をし、帯刀さんの懐に入り込み胸に耳をあて澄ます。
帯刀さんの優しい心臓の音色も安心できるいい匂いも場所も全部私だけのもの。
だって私が帯刀さんの特別だから。

「夕凪はいつでも幸せそうだね。そんなに私といることが幸せ?」
「当たり前じゃないですか。私は今もこれからも帯刀さんの傍にいられるんなら、何があってもずっーと幸せですよ」

私を試すように当たり前過ぎることを問うから、迷わず自信を持ってそう断言する。
帯刀さんの傍にいられることが、何よりの幸せだって私は知っている。



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