夢幻なる絆
□8.闘いの仕方
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「本当にここは私にとって心地いい居場所でした。ですが私には、もうこの国が分からない。あなた達のように私達の異人とも対等に交流を持ってくれる人もいれば、長州のサムライのように話す前に武器を向けて斬りつける。武器を持たない商人でさえも・・・」
とアーネストは辛そう笑い心の内を真剣に語り、そのうち悔しそうに口を噤む。
そんなアーネストの気持ちは痛いほど分かって同情してあげたいんだけれど、この場合はちょっと状況が違うような気がした。
確かに異人と言うだけで斬り捨てようとするこちら側が全面的に悪いのは分かる。
でもそれでもやっぱり・・・。
「アーネスト、駄目だよそんなんじゃ。アーネストは他国に土足で入ってきた言わば部外者なんだから、その程度で諦めるなんて覚悟が足りないよ。話を聞いてもらえなかったら、力尽くでも聞いてもらえばいいじゃない?日本男児なんて単純馬鹿なんだから、拳と拳をまみえてこそ、真の友情が芽生えるってもんよ」
ガチ〜ン
「夕凪、黙りなさい。サトウくん妻の言う荒っぽい考えなどまともに聞いたら、痛い目を見て余計悪化するだけだよ」
「痛いです。帯刀さん」
言っているうちに感極まっていつものように荒いことを言い捨てていると、帯刀さんの手加減ないゲンコをくらいあえなく撃沈。
こめかみをピクピク痙攣させながらアーネストに、私の言葉が適切じゃないことを教える。
アーネストは圧倒され、何も言ってこない。
相変わらず帯刀さんは酷いです・・・。
私は真実を言っているだけなのに・・・。
「だけどまぁ話し合うことは大切だね。ちょうど私は四カ国の連合艦隊と戦おうとしている大馬鹿男に少々縁があって話に行く所なんだよ」
「・・・何を話に行くのですか?」
「玄武がないのに無謀な戦いをするのは、余計に馬鹿らしいとね」
「そう言えば玄武は小松婦人が持ってましたよね?しかし長州には玄武らしきモンスターいましたよ」
『は?』
話はゆっくりと前に進みそろそろゲーム通り誘おうと考えている時、アーネストは眉間のしわを寄せ思わぬことを呟き今度は私達を驚かす。
そんなこと全然考えたことがなかった。
玄武らしきのを高杉が持ってること?
だから四カ国の連合艦隊と戦おうとしてる?
でもなんで・・・?
そう言えば白虎の偽物が現れたとか言っていたけど。
まさか、玄武も・・・偽物?
「帯刀さん、急いで台場に向かわないと手遅れになってしまいます」
「そのようだね。サトウくん、私達と一緒に台場へ行かないだろうか?あの大馬鹿に言いたいことを、ちゃんと言わないと気が済まないでしょ?・・・気が済まないよね?私にはあの大馬鹿に言いたいことが山ほどあるんだよ」
真面目に私はこれからを急かすと最初は受け答えが返って来たんだけれど、アーネストに言ってるうちに段々完全なる私情が交じり恐ろしい殺気も漂い始めた。
大馬鹿と言うのは高杉のことで、明らかにそれは殺意も持っている。
・・・あのことを根に持ってるんだね?
「あの〜小松さん?・・・小松婦人、小松さんはあのサムライに相当恨みを持っているんですか?」
「え、あうん。ままぁね・・・」
何かを察知したアーネストは私の小耳で囁き問うけれど、私は何も言えずに苦笑して曖昧に答えるだけだった。
帯刀さんが、高杉に嫉妬してるなんて、
ましては嫉妬する理由なんて、
絶対に言えるはずがない。