夢幻なる絆

□8.闘いの仕方
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「それは、どうしてだ?」
「好きな人がいるからです」
「好きな人ね?でもそれは君の完全なる片思いで、勝算はまったくないんでしょ?」
「帯刀さん、そんな言い方失礼です。アーネストががわいそう・・・」

アーネストの爆弾告白にも関わらず、帯刀さんは冷たく言って悪魔の笑みをもらす。
まるでアーネストの好きな人を知っている見たいな言い方だったけれど、それはあまりにも残酷なことに私は口を挟みアーネストを庇ていた。

それにアーネストだったら本気を出せば 、大概の女性なら口説けるはずだ。

「失礼じゃないよ。サトウくんは愚かにも人妻に恋をしてるからね」
「・・・人妻?アーネスト、不倫は駄目だよ」

でも帯刀さんの言葉で真相を知った私は、考えを改め帯刀さん同様否定する。

不倫も浮気も絶対にいけないこと。
どこぞの現実を芸能人が不倫は文化だと言っていたけれど、そんなこと絶対にない。
一夫多妻制であっても、帯刀さんに浮気なんてして欲しくないもん。
・・・浮気とは言わないけれど・・・。

「凪さん、ご忠告ありがとうございます。ですがこの気持ちに嘘を付くことはできません。私はその方を本気で愛してるんです」
「アーネスト・・・」

真剣で揺るぎない眼差しでアーネストは想いを告げられてしまい、私はアーネストの気持ちも分かり何も言えなくなってしまった。
他人が何を言ってもアーネストの気持ちは、変わらないぐらい相手に夢中なんだろう。
だからと言って私はアーネストを応援は出来ず、これからもきっと諦めるように説得続ける。
不倫なんてしても、いいことなんてない。
友人が傷付いて不幸になっていく姿なんて、私は見たくないよ。

「アーネストの気持ちはわかった。だが残念ながら、それは出来ぬ」
「そうですか・・・」

そんなアーネストの願いは無情にも叶わず、深い溜め息を付き悲しそうに肩を落とす。
意外にあっさりと納得したのは、薄々無理な相談だって分かっていたのかも知れない。

こうなったら私が、アーネストにお似合いの子を探さないとね。
大和撫子みたいな咲ちゃんだったら、結案外お似合いなんじゃないかな?
咲ちゃんは南方先生に片想いしているけれど、南方先生には彼女がいるんだから諦めるしかない。
だからお互いに丁度良い?

「戻ろうか?」
「そうだな。そうしよう」
「それが良いと思います」
「私も賛成だよ」

考えることが増えて祟くんと話し会う前に自分なりにまとめようと思いそう話を切り出すと、誰一人として異論は出なかったので私は元の世界に戻りたいと願う。
すると四神のブレスレットが輝きだす。




・・・が?






「・・・あれここは?」

気がつくとそこは現代の見覚えのある部屋で、私はソファーで寝ていた。
カーテンの隙間から太陽がキラキラと差し込んでいて、朝だと言うことが分かる。
私が一番戻りたくない世界・・・。

「・・・嘘・・・」

状況が分かっていても信じたくない現実に思わずそう呟いてしまい、大粒の涙が次々と零れだし胸が苦しく張り裂けそうになった。

なんで私はこんな所に戻って来たの?
私は元の世界・・・。
私にとってまだここが元の世界なんだね。
だとしたら念じ方を間違えたんだ。

「姉貴・・・」
「・・・お義姉さん」

弟と雪ちゃんの沈んだ声が私の名を呼ぶ。
声の方に視線を変えれば、表情も浮かない二人。
こないだも弟は私の気持ちを察してくれて、そんな声と表情をして私を見ていたよね?
前回は平気だったけれど今回はいきなり過ぎたため、そんな二人を見てたら余計に悲しくなりしばらく泣き崩れてしまった。



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