夢幻なる絆

□8.闘いの仕方
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「南方先生、おはようございます」
「凪さん、おはようございます。もう大丈夫なんですか?」
「はい、完全復活です」
「それなら良かったです」

朝病院内を散策しているとどこからともなかくご飯の良い匂いがしてきて、匂いがしてくる部屋へ行くとそこには南方先生が朝食の仕度をしていた。
私はいつも通り元気いっぱいに挨拶をすると、南方先生もニコニコと挨拶を返して体調を問われる。
だから私は胸を張り元気をアピールして、南方先生に安心してもらう。
心はボロボロだけれど、体は元気その物。

昨夜はなかなか寝つけなかったんだけれど少しだけ眠れて、目が覚めたら帯刀さんはどこにもいなかった。
それはきっと私と会話をしたくないから起きる前に、そっと部屋から出ていったって言う所だろう。
そう思うと沈んだ気持ちは更に奈落の底へと落ちていくようで、一人でいるのが怖くなり誰かを捜し回っていた・・・かも?

「私も手伝います。南方先生は料理するんですね?」
「ただご飯を炊くだけで、後は缶詰めを開けるだけですよ」

って言って私は南方先生の隣に座り、余っていた缶切りで開けるのを手伝う。
大の男が4人も入ればそれなりの数になる。
でも缶切りぐらいなら、私にも朝飯前・・・。

「・・・ッツ」
「凪さん、大丈夫ですか?消毒しますから、ちょっと待って下さい」

油断しまくり調子に乗っていたツケなのか缶切りで思いっきり指を切り血が流れ、南方先生に余計な心配をさせて消毒をしてもらう。
本当にあっと言う間の出来事だった。

「ありがとうございます。私って本当にそそっかしいですよね。もっと慎重に物事を考えて行動しないと駄目なのに・・・」
「・・・帯刀さんと何かあったんですね?私でよければ、相談に乗ります」
「はい。・・・私がすべて悪いんです」

私が落ち込んでいることに気づいた南方先生はいつものように私に救いの手を差し伸べてくれて、私は涙ながらにその手を掴み悩みを打ち明けることにした。

私一人じゃ何も解決しないで更なる悪い方に進んで行くのは確実だから、人生経験豊富で恋愛経験もある南方先生に相談すれば何か解決法があるかも知れない。
それは甘えだって分かっているけれど、それしかもう私には道がないんだと思う。
もう私はこれ以上、帯刀さんを傷つけ悲しませたくないから。
そして南方先生に胸元の四神の刻印を見せる。

「凪さん、これは?」
「四神の神子である証です。帯刀さんも私が四神の神子になることを賛成してくれてたんですが、本音は反対だったんだと思います。これを見た途端拒絶されて、今朝は部屋から消えていませんでした。当たり前ですよね?」
「そう・・ですね。すみませんが、私は帯刀さんに同情します。凪さんあなたはあまりにも身勝手で、帯刀さんの気持ちを分かっていないですよ」

さすがにここまで酷いと南方先生でも私に同情することなく帯刀さんに味方して、ストレートにきつい言葉を叩きつけられてしまった。

あの温厚で優しい南方先生が言うからには、相当酷いことをしたんだね。
確かに私は帯刀さんの気持ちなんて、まったく考えずに無視していた。
いくら契約で見られない場所でやったとしても、キスなんて帯刀さん以外としていいはずがない。
帯刀さんがゆきとキスするのと同じ。
なのに私は、やってしまった。

「南方先生の言う通りです。・・・私達もう終わりですかね?」
「それは私には分かりません。まずはちゃんと帯刀さんの気持ちを理解していけばいいんです。・・・今ならきっと間に合いますよ」

絶望するしかなく諦めの言葉を口にすれば、さっきとは違うかすかな希望を微笑みながら言ってくれる。
それはなんの根拠もないことだったけれど、少しだけ私の心は救われたんだ。

まだ間に合うのなら、本当に間に合って欲しい。




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