夢幻なる絆

□7.未来改造計画
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「待たせてすまみません。神子殿、お久しぶりですね」
「お久しぶりです。小松さんと奥さん」

支度を済ませて龍馬達の所に行けば、ゲーム通りの大所帯の神子集団は帯刀さんを待っていた。
家老らしく礼儀正しく話す帯刀さんに、ちょっと緊張して相づちを交わすゆき。
私は果たして冷静に家老の妻らしく振る舞えるだろうか?

「それで一体何のようですか?私はあなた達みたいに、暇ではないのですよ。早く用件を済ませて欲しいね」
「あの、小松さん。白虎の札を持っていると聞いたのですが本当ですか?」

ほら、来た。

「本当ですよ。それが何か?」
「私に見せて貰えないでしょうか?」
「あいにく白虎は、現在おつかい中でね」
「え?」
「おつかい・・・?」
「白虎が、おつかいなんてするのか?」

ゲームだったら脱走イベントが現実ではおつかいイベントに変わっていて聞いた瞬間、ゆき達全員目をまん丸に見開き混乱し出す。
それは龍馬も例外ではなく思いっきり驚いて・・・呆れていた。

そうシロちゃんは帯刀さんの言う通り、現在江戸の仁友堂までおつかい中だった。
私が偶然持ち合わせていた使えそうな物と、咲ちゃんに買ったアクセサリーを届けに・・・。

「ええ、しますよ。最近ではお駄賃まで要求してくるようになり、いささか手に焼いております」
「お駄賃まで・・・」
「あの、小松さん。白虎は呪詛をかけられてるんですよね?」
「残念ながら白虎は、ピンピンして元気にしてますよ。神の癖に人を本気で愛して、私の妻を口説いている日々です」
「え、嘘・・・」

爆弾発言連発でゆき達はもう最初の予定を見失っていて、私でさえもシロちゃんがお駄賃を貰っていることには驚いた。

神様でも欲しい物があるんだろうか?
だとしたら一体何?

「ですから神子殿のお力は必要ありません。他に何かありますか?」
「白虎の札は本来龍神の神子の物。だから返して欲しい」
「八雲、言葉を慎め。失礼にも程がある」
「だって本当のことなんだろう?」

冷たくあしらう帯刀さんに都はついに怒り爆発とばかりに暴言に近い言葉を吐くと、チナミちゃんは気まずそうに忠告する物の効果はなし。
こう言うのもゲーム通りか。
なんかそう考えると寂しいな。

「それは出来ません。今も言いましたが、白虎は妻に忠誠を誓ってるのです。ですから白虎は認めたくありませんが、妻の物です。龍馬もそう思うでしょ?」
「まぁ、そうだな。お嬢、四神集めは諦めることはできないのか?」
「そんな。四神は私達の世界を元に戻すために必要なんです。なら少しだけでいいので、白龍の札を私に貸して下さい」

きっぱり帯刀さんが断ってくれ龍馬も私達の味方をしてくれたのに、ゆきは悲しそうな表情を浮かべ自分勝手で図々しいことを言い出した。
本当にゆきは自分勝手で、疑うことを知らないおめでたい子。
ゲームをやってますます人間性も嫌いになった。

「絶対にいや。あんたなんかに大切な白虎を渡さない。騙されてるとも知らないで」
「何言ってるんですか?」
「あんたは宰相とそこの夢の屋さんに、騙されてるんだよ。この世を滅ぼそうとしているのは、宰相なんだからね」

感情が高まりつい言わなくてもいい余計なことを、喧嘩腰で声を張り上げ言い切ってしまった。

こんなこと初対面に近い私が言ったって信じてくれないって分かってるから、しばらくは黙っていようもしくは言わないでおこうと思ってたのに・・・。
なんか頭に血が上って、我慢できずつい言ってしまった。
私の悪い癖。

「え?そんなこと絶対にありません。私に良くしてくれる人達を、何も知りもしないで悪く言うのは辞めて下さい」
「あんただって良いように騙されているだけで、そいつらのことなんて良く知らない癖して」

案の定まったく信じてもらえず強く言い返されるけれど、私は負けじとその言葉をまるまる返しゆきを睨み付ける。
これで私の印象は、最悪になったんだろう。

「夕凪、落ち着きなさい。白虎は神子殿には渡さないから」
「・・・・・」
「神子殿、妻の言葉は真に受け止めなくてもいいですが、今日の所はどうかお引き取り下さい。それと今度お越し頂く時はお供を二人に絞って頂きたいね」
「・・・分かりました。また来ます」

と帯刀さんは私の口を塞ぎ抱きしめ落ち着かせながら話をまとめれば、ゆきも潔く引き下がりことは取り合えず穏便に終わった。

・・・が

夢の屋さんの視線が痛かったのは言うまでもない。



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