夢幻なる絆

□7.未来改造計画
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夕食が終わり帯刀さんは明日の打ち合わせのため、一人庭で涼みながら今夜も蛍鑑賞をしていた。
一人だとなんだか物足りないと感じてしまうけれど、ゆきがいる以上シロちゃん達を今はまだ出すことは出来ない。

「凪さん、こんな所にいたんですね?」
「え、南方先生?」
「綺麗ですね。蛍も星も」
「はい、そうですね。こんな素晴らしい環境破壊して欲しくないな」

南方先生に声をかけられ振り向けばやっぱり南方先生がいて、以前のように夜空を眺めながらそんなことを呟き笑みを浮かばせる。
だから私も柄にないことを言ってしまった。
本当にそう思う。

こんな美しい自然を人間の勝手だけで、破壊したらいけないんだ。
出来ることなら私達の世界とは違った今のように自然と共存する未来を歩んで欲しい。
そしたらどんなに素敵だろうな。

「・・・ここは異世界なんでしょうか?」
「南方先生はどっちがいいですか?この世界の未来と、ゆき達のような異世界の未来?」

すると南方先生は深刻にそうに聞かれるだろうと思うことをそのまま問われ、私は予め考えていたことをそのまま問い返す。
あえて私のことは棚に置いたのは、さすがに私のことを問われたらうまく隠し通せる自信はなかったから。

「そこまで考えていませんでした。私は今まで単純にこの世界は過去なんだと思っていましたから、いきなりゆきさん達は異世界の未来から来たことが分かって混乱してたんです。私の世界はゆきさん達とは別の世界だって言う可能性もあるんですよね?」
「そうですよ。それに仮にここが異世界だったらそれはそれで良いじゃないですか?好き放題やりたい放題しても、まったくもってここの未来には問題なし。だって分からない未来は、無限大ですからね」
「それもそうですね。なんかそう考えたら、随分気が楽になりました。凪さん、ありがとうございます」

思いっきり自分の都合が良く前向きすぎる私の考えに、南方先生は意外にも鵜呑みにしてしまい悩むことを辞めた。
南方先生は苦労人でいろんな悩みを抱えているけれど、たまにあっさりと私のくだらない嘘を信じて納得してしまう。

案外単純なのか?
でもまぁそれで悩み事が減るのなら、何よりである。

「なんだ凪と南方先生もこんな所にいたんだな?あんまり親密そうにしていると、後で帯刀に怒られてもしらねぇぞ?」

そこへ今度は龍馬と、ゆき達現代組がごそっとやって来た。
現代組も私この幻想的な光景が珍しく瞬さえも目を輝かせて見ていて、龍馬は楽しげに冗談とばかりに私達の仲を疑い構ってくる。
でもそれは絶対にないと言い切れることだから、こんな軽々しく冗談を言えるんだと思う。
そうじゃないと恐ろしくて、口が裂けても言えないもの。

「帯刀さんは私と南方先生のことは、ちゃんと分かって信じてくれてるもん。それにもし相手が私で良かったら、家庭的で一途な咲ちゃんを選んでるんじゃない?」
「凪さん、何を言ってるんですか?」
「それもそうだな。野風もいるしな」
「龍馬さんも変な事言わないで下さい。いい加減にしてくれないと、怒りますよ」

だから私も調子に乗ってふざけていると新たなる女性の名が上がり、南方先生は顔を真っ赤っかにして珍しく怒り出す。
それはまったくもって迫力がないけれど、ある意味危機感を感じたから止めることにした。



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