夢幻なる絆

□7.未来改造計画
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「奥方様、南方先生がお越しになられました」
「あ、はい。通して下さい」
「分かりました」

しばらくのどかな時間をのんびりと三人で過ごしていると、この宿を警備する藩士さんが待ちに待った知らせを伝えに来たので、私は家老の妻らしい対応をしなんなくとやり過ごす。

いくらなんでもいきなり宿の中にいるのは藩士達から不信を抱かれるから、ちゃんとした宿には普通に訪問した方が良い。

それが帯刀さんの指示で、藩士達にも今南方先生が来ると告げていた。
南方先生宛の手紙にも書いたらしい。




「凪さん、こんにちは」
「南方先生。わざわざお越し下さり、ありがとうございます。どうぞこちらに」
「いえいえ。まずは白虎の札をお返ししますね」
「はい。連日だったから、きっと疲れちゃったんですね」

すぐに南方先生はやって来て部屋に入り言われた通り座ると、まずは白虎の札を差し出され私はそう言いながら懐にしまう。

シロちゃん、お疲れ様。ゆっくり休んでね。

「なら私も札に戻る。だからシロと同じ扱いをして欲しい」
「それはよい考えですね。私も便乗させて下さい」
「もう二人してしょうがないな」

とクロちゃんだけではなくシュウちゃんまでもがそんなことを言いだし、答えを待たず同時に札へと戻り私はそう言いながら頼まれた通り懐に入れた。
でも内心そこが可愛いとこだと思ったりする。

「そう言えば帯刀さんはお留守ですか?」
「はい。なんか緊急事態が発生したみたいですよ」
「そうなんですか。それにしても帯刀さんは若いのに、すごい人ですよね。彼のおかげで、仁友堂は救われました。今まで恥ずかしながら毎日食べていくのがやっとの生活だったんですが、今では薩摩藩からの毎月の支援のおかげで先生達に給料もあげられるようになったんです。それだけではなく数名の藩医が学びに来てくれていて、人手不足も解消されありがたいです」

と南方先生はすごく嬉しそうにそんなことを話してくれて、私まで嬉しくなりますますほこりに思った。
先見の目を持っているからこそ、そんなことが出来るんだよね?
それに帯刀さんは裏があっても、民達のことを一番に考えている。
心優しくて温かい人なんだ。

「帯刀さんらしいな。きっとそれは未来に役立つと考えているんだと思います。まぁ未来の技術なんだから、当たり前と言えば当たり前ですけれどね」
「ですね。ですから私も帯刀さんと凪さんの力に出来るだけなるつもりです」
「ありがとうございます」

以前の南方先生とはなんとなく違う前向きで明るい反応に、私は安心して心から感謝する。
この分だと過去を変えるって言う悩みは、だいぶ吹っ切れたのかも知れない。
それともあんまり深く考えないようにしてるだけ?

「凪さんが未来人であっても、過去の人である帯刀さんと結婚した理由がようやく分かりましたよ。彼は優しくて芯のしっかりした人ですからね」
「そう言って貰えると嬉しいです。帯刀さんって冷たい人だって誤解されやすいですけれど、そんなことは絶対にないですからね」

南方先生が帯刀さんの良さを分かってくれたのが自分のことのように嬉しくて、胸を張って更に良さを伝えると南方先生はニコニコしながら頷いてくれる。
だから私はますます気分がよくなってもう少しでのろけ話にになりそうになるけれど、突然乱暴な足音がこちらに聞こえてくる。



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