夢幻なる絆

□7.未来改造計画
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「凪とお出掛け。凪と初めてのお出掛け」
「そう言えばクロちゃんとお出掛けするのは、これが初めてだね」

すっかりクロちゃんの特等席になった私の首に巻き付き機嫌が良く、私もそのことに気づきなんだか嬉しくなってくる。
そうと分かれば今日は心ゆくまで楽しもう。

「私は凪と一緒に甘い菓子が食べたいぞ」
−それはいいですね。私も食べたいです。
「なら決定!!甘味屋さんへレッゴー!!」

クロちゃんの神様らしくないリクエストにシュウちゃんも賛成するから、私もすっかりその気になり善は急げとそう言って甘味屋さんを目指して走り出す。
と言ってもここは初めて訪れた地だから、甘味屋さんのある場所なんて見当がつかない。
でも繁華街っぽい所を見つけさえすれば、甘味屋の一軒ぐらいはあるだろう。

−凪、甘味屋なら私が知っています。なんでもその店では、夏蜜柑丸漬が評判らしいですよ。
「夏蜜柑丸漬?なんかすごく美味しそう。じゃぁそこに行こう」

思いも寄らぬシュウちゃんのナイスな情報に、私はよだれをたらし夏蜜柑丸漬を妄想しながら独断でそこに決定してしまう。

夏蜜柑丸漬。
どんな物かは分からないけれど、名前からして夏みかんを丸ごと砂糖漬けにしたお菓子だと思う。
美味しかったら帯刀さんにも、お土産に買っていこう。

−凪はいつでも帯刀中心に考えて、幸せそうですね。そんな凪を見てると、私まで幸せになります。
「私はこう言う時ぐらいは、もう少し私のことを考えて欲しい。もちろん幸せそうにしている凪を見るのは好きであるが」
−クロはシロと同じで凪を一人いじめしたいのですね。
「当たり前だ。シュウは違うのか?」
−私は元気で幸せな凪の傍にいられれば、それだけで十分です。
「・・・・・」

恥ずかしいことを平気で言うのは神様の証だろうか、二人の会話に付いていけず知らん顔をする。
しかし聞きたくないけれど、聞こえてしまう悲しき現実。

なぜこんな私がここでは、異常にまでモテる?
絶対に何かがおかしいよ。
誰かこの会話を止めて下さい。

「これはこれは凪さん、あなたもここまで来てたのですね」
「近藤さん!!」

祈りは天に通じたのかグッドタイミングで近藤さんに声を掛けられ、私はすぐに彼の元へ駆け寄る。
確かゲームで新選組も長州に来ていることになっていたから、偶然出会っても不思議ではない。
シュウちゃんとクロちゃんには悪いけれど。

−黙っていた方が良いですね。もちろんクロもですよ。
「・・・仕方がない。しかしなぜ人の子は私達の邪魔をする」
−クロ、黙りなさい。

優しくて気の利くシュウちゃんの忠告にクロちゃんは愚痴り出すけれど、今までに感じたことない威圧感に一瞬にして黙ってしまう。
シュウちゃんの知られざる素顔を知った。

「お一人でお出掛けですか?」
「はい。夏蜜柑丸漬を買いに行こうと思って」
「奇遇ですね。実は私もそうです。だったらご一緒にいかがですか?」
「いいえ、結構です。今日は大切なお客様が来るので、その時出す物なんです。だから私すぐに帰って準備をするんで、申し訳ございません」
「そうなんですか。いいえ、気にしないで下さい」

せっかくの誘いを私は即答で適当な理由で断りを入れると、人の良い近藤さんは疑うことなく最悪自体は免れた。

本当は少しだけ近藤さんとなら一緒に食べても良いと思ったんだけれど、それは帯刀さんとの信用を裏切って約束を破ることにもなる。
それに私だって、もうあんな悲しい顔を見たくないもん。



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