夢幻なる絆

□7.未来改造計画
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「シロちゃん、連日で悪いけど宜しくね」
「フム。気にするでない。これも凪を護るためだ。そうだろう?小松帯刀」
「そうだよ。南方先生が居てくれれば、何かあっても大丈夫だからね。くれぐれも失礼がないようにするんだよ」

翌日の朝から帯刀さんとよく話し合い南方先生を藩医として一時的に招くことになり、またシロちゃんに迎えに行ってもらうことになった。

ちゃんと帯刀さんの依頼状を持ってもらいこちらの準備はすべて整い後は南方先生の判断に任せるんだけれど、昨日の手紙には八葉代理は悩み中だけど自分に出来ることならなんでも協力するから遠慮なく言って欲しい書いてあったからきっと大丈夫だと思う。
私達は南方先生の腕を必要としている。

「心得ておる。南方仁には必要以上に急かさない」
「分かってればいい」
「では行ってくる」
「うん、いってらっしゃいシロちゃん」

そう言って空高く飛んで行くシロちゃんに、私は元気いっぱいに手を大きく振りお見送りする。


「帯刀さん、これから買い物に付き合ってもらえませんか?」
「買い物?ああ着物が足りないんだね。いいよ。好きなものを好きなだけ買ってあげる」
「着物じゃなくって、夕食の買い物です」

買い物の同行をお願いすると見当違いなことを当然のように言われてしまい、私は肩を落とし訂正する。

これから台場まで行くと言うのに、何荷物を増やすことを言うだろう?
しかも二着あるのに、足りないなんて・・・。

「夕凪、ここは宿なんだから、そう言うことは女将達に任せとけばいい」
「え〜愛する妻の手料理を久しぶりに食べたくないんですか?」

てっきり嬉しそうな反応をしてくれると思ったのに返ってきたのは冷たい反応で、私は思いっきり不満げに頬を膨らませて言い返す。
でも

「今は梅がいないから遠慮する。他人の家を火事にされたら大変だからね。それとも火事にしないと断言できる?」

あんなに優しい言葉を昨夜は掛けてくれたのに、今日はいつも通りの厳しくて適切な意見を言われて切り捨てられる。

帯刀さんはすべて知ってるんだ。
ここの火加減が良く分からなくて危うくぼや騒ぎになりそうになったことや、梅さんが付いていないと高い確率で焼きすぎるさまざまな事件を。
誰が一体しゃべったんだろう?

「・・・大人しくしてます」

悲しいことに断言できない私は、そう言ってシュンと小さくなった。

そりゃぁこの二週間料理を必死に研究して失敗する頻度は減ったけれど、それはあくまで現代技術に頼っている台所を使っての話。
ここでは良く考えたら、前とあまり変わらないかも知れない。
情け無いけれど・・・。

「御家老、大変です」
「何かあったの?」
「実は・・・」

いきなり明らかに何かある焦った表情のをした藩士がやって来て、私に聞かれてはまずいのか帯刀さんに耳打ちを始めた。
私は気を遣いわざとそっぽを向き、気にしない素振りをする。
いくら私が甘えん坊で帯刀さんを一人いじめしたいと思っても、政務のことなら首を突っ込まないで物わかりの良い妻でありたい。

「分かった。すぐに行こう」
「仕事ですね。頑張って、行ってきて下さい」

帯刀さんの顔が真剣に変わったためそれだけ重大なことだろ私にも分かり、何か言われる前にそう笑顔を絶やさず言って見せた。

これぞ良き妻の行い。

「ああ。夕凪、シュウとクロを連れて行くのであれば、近場に限り特別に出歩いても良いよ」
「本当ですか?ありがとうございます」

すると思ってもいない許可が降りて私はますますご機嫌になり、藩士の前で堂々といってらっしゃいのキスをしてしまう。
帯刀さんの表情も少しだけ和らぎ、藩士達と共に出掛けていった。



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