夢幻なる絆

□7.未来改造計画
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「わぁ〜きれい」

どうにか生野菜を完食して帯刀さんに目隠しされたまま庭に出て解放されると、そこには数え切れない幻像的な小さな光が四方八方自由に舞っているように飛んでいる。
蛍の光だ。
以前実物を見たことあるけれどその時よりも少し大きいのは、今の時期的に平家蛍だろうか?
そしてその時よりも綺麗に見えるのは、愛する人と一緒に見てるから。

「・・・夕凪の方が綺麗だよ」
「は?帯刀さん、熱でもあるんですか?」

そんな光景を帯刀さんの腕の中で夢中になって見とれていると、ギュッと強く抱きしめられて信じられない言葉が耳元でそっと囁かれた。
それは今まで一度もこう言う場面では聞いたこともないこと台詞に、私は耳を疑い帯刀さんをマジマジと見上げる。

私が綺麗?
いつもならそんなこと言わないのに、今日に限ってなんで?
この人本当に帯刀さん?
それともついに目が腐ったとか・・・。

「ないよ。今夜は特別。こうして二人だけの静かな時間が半月ぶりだから、ただたんに愛しくてたまらないだけ。夕凪だってそうでしょ?」
「・・・はい。とっても」

そう甘く囁かれ途端、あんまり考えないようにしていた淋しさが爆発する。
甘えん坊の私が淋しくなかったはずがない。
昼間は強がっていつも通りに振る舞っていても、夜はさすがに淋しくて苦しくて眠れず泣き明かす時が度々あった。
泣かないという約束はもう私には守れないぐらい、私はどんな時でも帯刀さんを求めている。

「夕凪のいない日々は正直もう絶えられない。こうしていつも私の手が届く所にいなさい」
「・・・そんな事言わないで下さい。私だって出来ることなら、ここにずっと居たいんです」

今まで一度も言ったことがなかった帯刀さんの本音のワガママに、私は心を討たれながらも小さく首を横に振りそれしか言えなかった。

私がどんなにここにいたいと願っていても、今の所その願いは叶えることなど出来ない。
でも私のせいで、帯刀さんはこんなに追い詰められる。
私のことををこんなに愛してくれてるのに、どうして私は叶えてあげられないんだろう?
自分があまりにも情けない。

「そうだったね。・・・すまない」
「いいえ。私ってば本当に駄目妻ですね。旦那さんを癒すどころか、いつも迷惑ばかり掛けていて」

と私はわざと明るい口調で言い返しては見た物の、今からもう次の別れが怖くてたまらなかった。

遙か5を全クリをするためまた私は戻らないといけないとは分かっているけれども、やっぱり私は帯刀さんと別れたくない。
だって新たに知ることが出来た帯刀さんの弱い一面にますます心奪われ、今までにも増して愛しくなっていく。

「迷惑ばかり掛けていいんだよ。夕凪が傍にいるって言う何よりの証なのだからね」
「本当に今の帯刀さんはどうかしてますよ。そんなこと言ったら、私調子に乗りますよ」
「それでも私は君を愛してる」

更に優し過ぎる言葉を掛けられて私なりに急ブレーキを掛けるけれど、それはまったく効果がなくとそれどころか卑怯わざの深いキスをされる。
帯刀さんの限りない愛が伝わって、私は帯刀さんに身を任す。

二人仲良く蛍観賞だったはずなのに、いつの間にか愛し合うことに夢中になっていった。




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