夢幻なる絆

□6.四神を救え
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「確かに先生が八葉だったら百人引きだな。どんな怪我でも治せる。それにお嬢も異なる世界から来たらしいから、ひょっとして何か分かるかも知れん」
「龍馬さん私を評価しすぎですよ。・・・でも少し考えさせて下さい」

ご気楽に言う龍馬の言葉に、南方先生にしては謙遜しながらも前向きな答え。

やっぱり南方先生は、元の世界に戻りたいんだね。
恋人が心配なのは当然か。

「もちろんです。世界の危機については、私も四神達も出来ること以上に協力するつもりです。妻との幸せな時間を、失いたくないんでね」

私を抱き寄せ帯刀さんは最後にそう言い、もう一度南方先生に頭を深く下げる。

妻との幸せな時間を失いたくない。

私もそう思うから、これから頑張る。

「相変わらずお二人は、ラブラブですね。小松さんが八葉になりたくないのが、よく分かります」
「これを見せられたら、誰も強制しないな。シロもそう思ったから、代役を捜してるんだろう?」
「まぁそうだな・・・」

そんな私達はアーネストと龍馬は茶化され、さらに触れてほしくないことを言われたシロちゃんは歯切れの悪い返答する。

そうなるのも無理もない。
代役を立てようと考えたのは帯刀さんとシュウちゃんであって、シロちゃんは言われてから渋々承諾。
ひょっとしたら代役は本当に言葉だけの代役であって、八葉はずっと変わらず帯刀さんのままなのかも知れない。
南方先生にとっては迷惑でしかないと思うけれど、だけどそれでも私はこれが一番の解決策だと思っている。

「クッ・・・。まぁそう言うことにしとこう。ではこの話はこのぐらいして、そろそろ食事にしましょう。今夜は妻が腕を振るって作った中華料理なんです」

何か言いたそうにも帯刀さんは含み笑いをしながら真実を伏せ話題を変えるけれど、それは間違えなくわざとの変なプレッシャーで私の肩に重くのし掛かる。

そんなこと言ったら私は料理上手で期待して下さいと言っているようなもの。
でも私の手料理はいたって普通で、しかも今日のは梅さんが主に作っている。
つまり厳密に言えば、限りなく嘘に近い。

「へぇ〜凪の手料理ね。そりゃぁいい」
「小松婦人の手料理。・・・主婦らしいことをしているなんて驚きですね」
「・・・アーネスト、何を言いたいの?」
「イヤ別に。小松婦人の料理の腕前が、どれほどの物なのか楽しみです」

裏表ない龍馬とは違い、明らかに黒がある白々しいアーネストの言い方。
爽やかで王子様スマイルのはずがなぜか黒いスマイルに見えて、私は恐ろしくてどっとイヤな汗を流す。
英語で黒いことを言えないため、きっと今日はずっとこんな感じだろう。

「・・・食事を持ってきますね」
「我も手伝おう」
「私も手伝います」
「なら私も手伝うよ。せっかくの料理を転けて台無しにしたらいけないからね」
「・・・ありがとう」

シロちゃんとシュウちゃんだけではなく、帯刀さんもそう言い率先して席を立つ。
真実でそんな優しさが嬉しくもあるけれど、複雑すぎる心境だった。




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