夢幻なる絆

□6.四神を救え
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「アーネスト、いらっしゃい。一番乗りだよ」
「一番乗り? 私の他にも誰か来るのですか?」
「そう。私達の披露宴にいた龍馬って言う人と、私達の大切な友人」

夕食を作り終わり時間があるうちに屋敷を一周ランニングしようとした矢先、アーネストがやって来たので予定変更おもてなしをすることにした。
帯刀さんとの約束の方が、当然優先順位が高い。
アーネストには龍馬と南方先生のことを言ってなかったらしく、目を丸くしてかなり驚いている。
この分じゃ龍馬と南方先生にも、アーネストのことを言ってないだろう。

「そうですか。一体なんのお話ですかね?」
「さぁ〜、私も知らないんだ。あ、そうそう。今日は英語で黒い本音を吐かない方がいいよ。龍馬はともかく、南方先生は英語をマスターしてるはずだから」

またいつものように暴言を吐かれる前に、軽くそう言って警告する。

南方先生は未来のお医者様。
医者と言えば、カルテに書く文字は英語。
だから医者になるには、英語が必修科目。

そう言えば南方先生も遙か5も住人・・・なのかな?
見たイラストにはそれらしい人物はなかったから、本来だったら関わらない脇キャラ?
それともひょっとして、私と同じリアル住人?

「南方先生?そう言えば江戸で噂を聞いたことありますが、その方は医者でしょうか?」
「あたり。私の命の恩人。南方先生も外人だからと言って偏見を持たない人だから、猫を被っていれば大丈夫だよ」

意外にも南方の噂だけはアーネストも知っているようで私は笑顔で頷き、親切心から皮肉交じりで今度は助言もしてあげた。
これぐらい本音を言わなければ、アーネストには分かって貰えない。

別に皮肉を言って嫌われるだけならいいんだけれど、南方先生って小心者だから嫌な思いをさせたくない。
これはアーネストのためじゃなく、南方先生のために言っている。

「ご忠告ありがとうございます。そう言えば私も先日、英語を理解している少女に出会いました」
「へぇ〜、それでアーネストの腹黒がばれたんだ。自業自得だね。それでその少女はどう言う子?」
「心優しく芯がしっかりしている人でした。異世界からやって来た名前蓮水ゆきと言って、龍神の神子だそうですよ」
「龍神の神子・・・」

そんな私の皮肉も爽やか笑顔で交わされてしまいそれどころかすでに手遅れな状況となっていて、苦笑しつつ興味心から詳しく話を聞き出すと聞きたくなかった名前を聞かされ一気にブルーとなり歩く足を止める。
確かにアーネストは神子の八葉なのだから必然だとは思うけれど、それでもなんかイヤだった。
こんな所であの子の話題なんて聞きたくなんかない。

「小松婦人・・・?」
「あ、なんでもない。そうか。神子はゆきって名前なんだ。私も会ったんだけど、可愛い子だったね」

そんな私の異変に気づいたアーネストは心配そうに私の名を呼ぶから、思ってるのとは真逆のことを言って何事もなかったように話を合わせ広間へと通す。

「・・・そうそう。小松婦人、これはお土産です」
「え、お土産?」
「小松婦人の大好きな茶葉と、クッキーの詰め合わせです」
「わぁ〜ありがとう。早速紅茶を入れてくるから、待っててね」

思わぬお土産に私の沈んだ気持ち一気に晴れ、すでに頭の中は紅茶とクッキーでいっぱいになった。

単純すぎる私の頭。
こう言う時ばかりは、そんな自分で良かったと思う。
それにきっと要領がいいアーネストことだから、神子の話は禁句だと察してくれたはず。

そしてルンルン気分でお土産袋を高々と持ち上げ、そう言って紅茶を入れるため広間を飛び出した。




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