夢幻なる絆

□6.四神を救え
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「夕凪、それどう言う意味だか分かって言ってるの?」
「もちろんです。私は今すぐ玄武を助けたいんです」
「いきなりの思いつきも程があるよ。そんなこと駄目に決まってるでしょ?」
「なんでですか?」
「私の気持ちも考えなさい。とにかく絶対に駄目。札は渡さない」

返ってきたのは我に戻った帯刀さんは怒ってしまい、私の意見なんてこれ以上聞いてくれないご様子。
確かに思いつきと言われてしまえば身も蓋もないけれど、玄武を早く助けたいと言う気持ちはあった。
それに龍神の神子に出会ってしまった以上、早く玄武と青龍の呪詛を払って力を貸して欲しい。
龍神の神子にじゃなくって私に。
だから私もここで引き下がるつもりはまったくない。

「じゃぁいつになったらいいんですか?」
「まず神子殿に穢れを・・・」
「神子の力に頼りたくないです。私にだってそう言う力があるんですよ」
「・・・仕方がない人だね。そんな嫉妬しなくても、私は夕凪だけの物だよ」

帯刀さんが神子を頼ろうとしたから私は冷静さを失い感情むき出しで思いをぶちまけると、あんなに怒っていた帯刀さんの顔に安堵が浮かび優しく私を抱きしめそう耳元でそっと呟きキスをしてくれる。
物わかりの良い旦那様で助かった。
安心できる温もりにほんの少し落ち着きを取り戻すけれど、それでもやっぱりまだ怖くって焦っている私がいる。
このままではいつか帯刀さんは、あの神子に取られてしまう。
それだけは勘弁して欲しい。

「でも帯刀さんは神子の八葉だから。神子は可愛くて若くって・・・」
「だからまずは四神を自分の仲間にしたいって訳だね」
「・・・はい」
「凪、そんなに思い詰めていたのだな。可哀想に」
「シロも残酷なことをしますよね?天の白虎を交代するわけにはいかないのですか?」
「交代・・・。小松帯刀が死ねば・・・」
「シロは私に本気で殺されたいの?」
「あなたは学習能力が欠けてますね」
「すまない。忘れてくれ・・・考えてみよう」

帯刀さんの懐で涙を流しまだだだをこねていればシロちゃんとシュウちゃんも私を心配してくれるけれど、その解決方法はなんだか笑えないコントのようになり話は一瞬にして決裂となった。

八葉は死なないと、役目は終わらないんだ。

「だからまずは玄武を救うんです。覚悟は出来てます」
「・・・だったらせめて今抱えている政務が落ち着くまで待って欲しい」
「そしたら玄武の札を、私に渡してくれますか?」
「ああ、約束する」
「分かりました。その言葉信じます」
ようやく私の決意が帯刀さんにも伝わったらしく、聞く耳を持ってくれて淋しそうにもそんな約束をしてくれた。
それは明日になれば気が変わるかも知れないけれど、それでもさっきまでとは違ってやっぱり渡さないとまでは言わないと思う。
ただ二・三日か一週間か一ヶ月かは分からないけれど・・・・。

「凪、良かったですね」
「我らも可能な限り協力するから、小松帯刀もそう心配するでない」
「うん、ありがとう。期待してるね」
「たまには神の言葉を信じるよ」
「我に二言はない。シュウもそうだろう?」
「ええ、もちろんです」

いつも優しいシロちゃんとシュウちゃんは当たり前のように力強くそう言ってくれて、私の心は完全に晴れ神子への嫉妬心はいつの間にか消えていた。




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